リハで台本読み 独特「濱口メソッド」 感情込めるのは本番だけ…俳優の自然な演技引き出す

[ 2022年3月29日 05:30 ]

第94回アカデミー賞授賞式

映画「ドライブ・マイ・カー」で主演を務める西島秀俊より(C)2021「ドライブ・マイ・カー」製作委員会
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 米アカデミー賞で「ドライブ・マイ・カー」が国際長編映画賞に輝いた濱口竜介監督は、低予算の自主映画で腕を磨き、海外映画祭を舞台に飛躍を重ねてきた異才だ。俳優の自然な演技を引き出す独自の演出法でも知られる。

 1978年川崎市生まれ。東大文学部を卒業している。学部の卒業生インタビューによると、父も兄も東大で「あまり多くを考えず」1浪して入学したという。入学後に映画研究会に入り、映画に傾倒していく。

 卒業後は助監督などを経て、東京芸大大学院映像研究科に入学。2015年「ハッピーアワー」がロカルノ国際映画祭で注目を集め、18年東出昌大(34)と唐田えりか(24)を起用した「寝ても覚めても」はカンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品。「偶然と想像」は昨年のベルリン国際映画祭で最高賞に次ぐ審査員大賞に輝いた。

 「濱口メソッド」と呼ばれる独特の演出方法は、リハーサルでは台本を徹底して棒読みし、感情を込めるのは本番だけ。「テキストの意味を事前に一つに絞らず、多義的なまま体に取り込む」ことで、撮影現場で役者の中に「本物」の感情が生まれると考えた。映画のストーリーには出てこない、登場人物たちの過去の出来事などを設定し、実際に演じる作業も行う。

 ≪カンヌ皮切りに受賞ラッシュ 上映2館から全米約160館へ≫「ドライブ・マイ・カー」はカンヌ国際映画祭脚本賞など4冠獲得を皮切りに受賞ラッシュ。全米批評家協会賞、ロサンゼルス映画批評家協会賞、ニューヨーク映画批評家協会賞という3大批評家賞を全て制覇。アカデミー賞の前哨戦といわれるゴールデングローブ賞では非英語映画賞を受賞した。米国では昨年11月からニューヨークの映画館2館のみで上映されていたが、今年2月には全米約160館まで規模が拡大した。

 ≪興収8億円超 全国約400館に≫「ドライブ・マイ・カー」は日本でも27日までに興収8億8889万円のヒットを記録している。昨年8月の公開は115館からのスタートだったが、ロングランを続け、海外での受賞ラッシュとともに上映館も徐々に拡大。今後の上映予定も含めれば、現段階で全国398館とハリウッド大作並みの規模となっている。

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