濱口竜介監督「マジか…」 「ドライブ・マイ・カー」がアカデミー国際長編映画賞!

[ 2022年3月29日 05:30 ]

第94回アカデミー賞授賞式

「ドライブ・マイ・カー」で第94回米アカデミー賞国際長編映画賞を受賞した濱口竜介監督(AP)
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 米映画界最大の祭典、第94回アカデミー賞の授賞式が27日(日本時間28日)、ロサンゼルス・ハリウッドのドルビーシアターで行われ、濱口竜介監督(43)の「ドライブ・マイ・カー」が国際長編映画賞(旧外国語映画賞)を受賞した。日本映画の同賞受賞は「おくりびと」以来、13年ぶり。コロナ禍によってロケ地が変更になるなど、さまざまな苦難を乗り越えての戴冠に、濱口監督は喜びを爆発させた。

 濱口監督は受賞が決まった瞬間、主演の西島秀俊(50)、岡田将生(32)、共同脚本の大江崇允氏(41)と次々に歓喜のハグ。ステージでオスカー像を受け取ると、英語で「君がオスカーだね」と顔をほころばせた。

 英語で米国での配給会社などに感謝を述べると、退場を促すBGMが流れたが「ジャスト・ア・モーメント」と制止。西島らの名前を挙げ「おめでとうございます。ここにいる出演者の皆さんに感謝します。ここに来られなかった出演者の皆さんにも感謝します。特に赤いサーブ900を見事に運転してくれた三浦透子さんに感謝します」と興奮気味に語り「皆さん、獲りましたあ」と誇らしげにオスカーを掲げた。

 これまでの映画賞での冷静さから一転、感情を表に出して喜んだ濱口監督。授賞式後の会見で「(自分が)傷つかないよう、呼ばれないかもしれないと考えるようにしていたので、端的に“マジか…”という気持ちだった」と正直な気持ちを明かした。また、スティーブン・スピルバーグ監督(75)から「おめでとう」と声を掛けられたといい「“この映画がとても好きだ”と言っていただいた」と話した。西島も「作品が、国や言葉を超えていろんな人に響いたことが会場で感じられた。とても幸せです」と笑みを浮かべた。

 受賞こそ逃したものの日本映画として初めて作品賞と脚色賞、史上3人目となる監督賞にもノミネートされ、存在感を示した。だが、完成までには多くの困難に直面した。村上春樹氏の原作権を取得し、主演が西島という座組みは決めたものの、出資社集めが難航。結局、想定していた製作費1億5000万円のめどがついたのは、クランクイン直前のタイミングだった。さらに20年3月、東京で撮影をスタートさせた直後に、ロケを予定していた韓国・釜山側から新型コロナ感染拡大により撮影はできないとの連絡が入り、変更を余儀なくされる。いったん撮影を中断し、11月の再開を目指して国内でロケ地探しを開始。広島に決まった後も、それに合わせ脚本を改稿する必要もあった。

 それでも濱口監督は「準備のための時間が取れたことは、作品にプラスだった」と振り返っている。最善策を模索しながら自身が納得する作品作りへの執念を貫き、アカデミー賞受賞という日本映画史に名を刻む偉業に到達した。

 ≪村上春樹氏の原作増刷が決定≫原作の短編集「女のいない男たち」(文芸春秋)は、今回の受賞を受け増刷が決定、累計100万部突破が決まった。村上春樹氏はかつて雑誌のインタビューに答え、神奈川県小田原市の劇場で映画を見たと説明。「どこまでが僕が書いたもので、どこまでが映画の付け加えなのか境目が全然分からなくて。それが面白かった」と語っている。

 ◇映画「ドライブ・マイ・カー」 村上春樹さんの短編集「女のいない男たち」に収録の小説「ドライブ・マイ・カー」を、濱口監督らが脚色し、同じ短編集に収録の「シェエラザード」「木野」からもモチーフを得て映画化した。妻(霧島)を失った舞台演出家(西島)の喪失と、専属運転手の女性(三浦)との車中での会話を通じて再生していく過程を描く。出演者は日本のほか韓国、台湾など多国籍。東京や広島、北海道などで撮影された。上映時間は2時間59分。

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