「カムカムエヴリバディ」上白石萌音 演出側は「ドキュメンタリーを撮った感じ」

[ 2021年11月10日 08:15 ]

NHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」で、汽車に乗る安子(上白石萌音)(C)NHK
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 【牧 元一の孤人焦点】10日放送のNHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」で、女優の上白石萌音(23)が演じるヒロイン・安子と、アイドルグループ「SixTONES」の松村北斗(26)が演じる大学生・稔の重大局面が描かれた。

 まだ見ていない人のために詳細の記述は避けるが、通常は序盤にあるタイトルバックが終盤に配置されたことが特徴のひとつだ。

 演出の安達もじり氏は「台本では、通常の位置にあった。編集作業の中で、安子の気持ちをたどっていった時、そのまま見たくなる感覚があった。大阪と岡山の距離感をどうやって出そうかと悩んでもいたので、安子が大阪を出たらタイトルバックを入れる編集を試してみたら、意外に良かった。朝ドラのフォーマット上、可能なのか確認しながら、あのような形にした」と明かす。

 見た印象としては劇的で、いつもと同じ15分の朝ドラながら、短編映画を見終わった後のような充足感を得た。

 何より、特筆すべきは、上白石の表情の良さだ。派手な表現ではなく、静かに、じわりと動かす芝居が秀逸。この日の放送だけではなく、上白石の表情の変化がこの朝ドラの見どころの一つになっている。

 安達氏は「上白石さんは凄い。芝居の域を超えて、安子として生きている感じがした。物語の世界観をセットやロケで作り込んだので、上白石さんには『そこで伸び伸びと生きてくだされば、それを撮らせていただきます』と伝えていた。それをそのまま体現してくださった。どのシーンにもそれを強く感じる。ドキュメンタリーを撮るような感じで撮らせていただいた」と話す。

 上白石は安子を演じているのではなく、自身と安子を同化させているように見える。本人は安子との類似点について「熱中すると、それ1本になるところ。決定的に違うのは、私はそれが長続きしないこと。安子はずっと好きでいられる子なので、そこは、いいな、と思います」と笑うが、同化具合が極めて良い。

 上白石の主演は、キャスティングではなくオーディションで決まった。制作統括の堀之内礼二郎氏は起用理由について「安子は素直でピュアで普通の子だが、上白石さんは役柄への理解やパフォーマンスが最も素晴らしかった。そして、最初にドラマを引っ張る華としての魅力があった」と説明する。

 上白石は昭和の時代のヒロインを演じることについて「現代劇よりも昭和以前の役の方が個人的にしっくり来ます。私は『昭和っぽい』と言われることも多いんです。その時代になじむように、ということは意識しませんでした」と話す。

 上白石の芝居を見ていて心地いいのは「自然な演技」ではなく「自然な動き」だからだろう。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局デジタル編集部専門委員。芸能取材歴30年以上。現在は主にテレビやラジオを担当。

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2021年11月10日のニュース