藤井3冠 4戦全勝で羽生九段を撃破 相手のわずかな緩手逃さず逆転

[ 2021年11月10日 05:30 ]

王将戦挑戦者決定リーグで羽生九段(右)を破って開幕4連勝の藤井3冠(撮影・島崎忠彦)
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 将棋の第71期ALSOK杯王将戦(スポーツニッポン新聞社、毎日新聞社主催)挑戦者決定リーグは9日、東京都渋谷区の将棋会館で2局を行い、藤井聡太3冠(19)=王位、叡王、棋聖=が羽生善治九段(51)を106手で下し、開幕4連勝でトップをキープ。渡辺明王将(37)=名人、棋王含め3冠=への7番勝負挑戦に大きく前進した。 藤井VS羽生指し手

 昼食を15分ほどで切り上げ、特別対局室に戻ってきた藤井は窓際に歩み寄り、しばし外の景色を堪能した。滝のように降り注ぐ雨に隣接する鳩森神社がかすんで見える。そして迎えた対局再開の午後0時40分。羽生の41手目▲1八角を見て、脳内が一瞬こわばった。

 「打たれてどう対応するか分からなかった。本譜は△5一飛としたのですが、受け一方になってしまって…」

 タイトル奪取通算99期を誇る棋界のレジェンドに示された手だれの一手。最新AIを利用して洗練の極みをいく藤井にとって、この「遠見の角」は虚を突かれる展開だ。悶絶(もんぜつ)の中盤が続く。「2歩を手持ちにされて、こちらが動いていくのが難しい形」。うかつに手は出せない。まさに金縛り。

 かすかな光明が差したのは羽生が71手目に▲5四角と、大駒の角を差し出してきた場面だ。意を決して5筋の飛車に3連続で歩を当ててつり出す。灰色のセーターはいつの間にか脱ぎ捨てられていた。わずかな緩手を突き、捕獲していた角を5六に打ち込む。「先手の王が見える形になって指せるようになった」と手応えをつかんだ。その後は慎重に寄せて勝ち星を手中にした。

 「最後も手が多くて分かりませんでした」と藤井は息をつく。開幕4連勝は簡単に手に入れたものではない。昨年の挑決リーグは初戦で対戦し、横歩取りに誘導される巧妙な作戦にはまって黒星発進。開幕3連敗のきっかけをつくってしまった相手に、1年かかって借りを返した。終局後は思い出したようにセーターを羽織って安堵(あんど)の表情を浮かべる。

 「残り2局ですけど、う~ん、あまり挑戦に関しては意識せず、次の対局に臨めればと思っています」

 12日か15日に永瀬が敗れ、19日の近藤誠也七段(25)戦に勝てば初の王将挑戦が決まる。クライマックスは徐々に近づいてきた。

 《勝者この一手》終局後、藤井が選んだ一手は98手目の△8一飛だった。「8一へと回って飛車を逃げつつ、(102手目の)△7八角成からの詰めろになりました。飛車を回って攻めの形ができているので手応えがありました」と振り返った。

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2021年11月10日のニュース