【内田雅也の追球】無死一塁で8番 「あわよくば」と考えない岡田彰布らしさ出たバント

[ 2023年4月14日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神4-1巨人 ( 2023年4月13日    東京D )

5回、木浪は送りバントを試みるもファウルに(撮影・大森 寛明)
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 阪神監督・岡田彰布が命じた送りバントの意図について書く。

 2―1と1点リードの5回表無死一塁で、8番・木浪聖也に送りバントを命じた。試合後の監督会見で岡田は「木浪に送らせるから、自分で打てと西にハッパかけたんよ」と笑った。西純矢は確かに打撃がいいが、これは本気ではなく冗談である。投手の打撃に期待するような策は採らない。

 帰り道に確認すると岡田は「西純でなく誰が投手でもバントよ。2死から近本で勝負よ」と話した。犠打と投手で2死になることを承知の上で、何としても得点圏に走者を進めたかったのだ。

 無死一塁で8番の状況は監督の思考が現れる。後で投手にバントさせるつもりで8番には打たせ、安打が出れば好機が広がる……といった「あわよくば」の考え方を岡田は嫌う。自ら「マイナス思考」と言うが、確実性や堅実な作戦を好む。

 この夜は木浪が2度、バントをファウルし、2ストライク後の「打て」で中前打したのは結果でしかない。無死一、二塁となって西純に送らせ、近本光司の犠飛でほしかった追加点が入った。

 「監督はサインで選手の気持ちをコントロールできる」と阪急や近鉄でリーグ優勝8度の名将、西本幸雄(故人)が語っていた。選手は常に監督をみている。言動はもちろん作戦で心が伝わる。

 プレーボール直後、1回表無死一塁で2番・中野拓夢に送らせた。初球をややセーフティー気味に投前に転がし、1死二塁をつくった。

 最近6試合で総得点6の「1点打線」の貧打も理由だ。加えて巨人先発はプロ5年目で未勝利の左腕・横川凱。くみしやすしと油断があってはズルズルいく危険があった。結果は3、4番凡退で無得点に終わったが、初回バントで活を入れ、空気は引き締まった。

 今季11試合で阪神の犠打は15個に上る。次いでDeNA8個。セ・リーグ断トツの多さに「えっ!?」と岡田は驚いていた。「そんなに使ってるつもりないけどなあ」。自然な采配の結果なのだ。

 バントは年々減少傾向にあり、1試合平均犠打が1を上回るのは2014年のDeNA(149犠打=144試合)から8年間途絶えている。

 岡田の前回(2004―08年)監督時代、1試合平均犠打が0・49→0・58→0・71→0・90→1・08と年々増加。15年を経た今季は目下1・36である。 =敬称略=
 (編集委員)

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