侍・栗山監督絶賛、日本ハム新球場は「世界一」 選手空間は「静」と「動」 安らぎ&戦いコンセプト

[ 2023年4月14日 06:00 ]

ロッカー室の全体像
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 北の大地に誕生した新球場「エスコンフィールド北海道」。14日からは今季2度目の開催となる西武3連戦が行われる。国内初となる天然芝を完備した開閉式のドーム球場はファンだけでなく、選手にとっても充実した構造となっている。選手空間のコンセプトは「静(安らぎ)」と「動(戦い)」。1882年着工のサグラダ・ファミリアのように、未完成と位置づけられた新球場の魅力に迫った。(取材・構成 秋村 誠人)

 クラブハウスへ入るためには、エントランスの重厚な扉を開けて入る。この重みが「1軍の試合に出る重みなんです」。岩本賢一球団副本部長はそう説明した。入り口一つに深いこだわりを持った選手空間。そこに新球場の魅力がある。

 扉の先はレトロ調のロビー。左右の壁面には、ビクトル・スタルヒンと久慈次郎のパネルが向かい合うように飾ってある。北海道の、日本の野球史を飾った偉大なバッテリーだ。照明も戸棚もレトロならビジョンもモノクロ。そんなノスタルジックな空間から選手ロッカーに入ると誰もが驚く。日本一広い316平方メートルを誇る円形のロッカーには、1脚22万円の椅子が40脚。照明は複数パターンを調整可能で、各ロッカーのシューズスペースは常に空気清浄される機能付き。4つある出入り口はクラブハウス出入り口、用具室、トレーナー室&風呂場、ベンチに通じ、空間を無駄なく利用。選手たちが心と体を休め、気持ちを高ぶらせる工夫が随所に施されている。

 ロッカーからベンチへ入る扉は、体ごとぶつかって開ける「パニックドア」を使用。試合へ向かう気持ちを高める狙いがある。そしてベンチは一転してシンプルな造りに。「ここは戦う場所という意味で余分な装飾はしてません。それは選手の要望でもあった」と岩本氏。ベンチ裏の廊下はチームの創設者、故大社義規氏の壁画が描かれ、大社氏の言葉「ファイトがあれば何でもできる」が刻まれている。さらにベンチ裏の壁には大リーグの名選手、ジョー・ディマジオの名言も。選手たちはこの言葉を胸に試合に臨む。

 安らぎと戦い。「静」と「動」をコンセプトに、選手たちが1日12時間以上も過ごすことがあるクラブハウスは「第二の家」と感じられるよう造られている。どの空間も現代風でありながらクラシカルでもあるというこだわりにあふれ、侍ジャパン・栗山監督も「世界一」と表現した。

 だが、これだけ見事な設備があっても完成形ではないという。岩本氏は意外な事実を明かした。「これが100%ではない。わざとそうしてます。これから選手とファンで球場を育てていく。我々で完結せず、我々が生きている間には見られないものができていくと思います」。偉大な先人たちがいて今の球界がある。だから、あえて余白を残した。写真のない壁や何も施してない空間がある。サグラダ・ファミリアのように、未来に思いをはせ、これから世界一の球場に造り上げる。それがエスコンフィールド北海道だった。

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