バントばかりと嘆いたロッテファンに知ってほしい!井口野球とは…、誤算とは…

[ 2022年10月15日 07:30 ]

ロッテ前監督の井口資仁氏
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 3年ぶりのBクラスに低迷したロッテは今季限りで井口監督が退任し、吉井新監督が誕生。すでに新しいチームが動き出しているが、担当記者の目線で、少し井口野球を振り返りたい。

 昨年、一昨年と2年連続リーグ2位に輝き、今季こそリーグ優勝と期待が大きかっただけに、ネットに書き込まれる井口監督に対するファンの声は厳しかった。プロだから結果を残すのが使命だが、違和感のある意見も目に付いた。

 采配批判も多かったが、個人的な意見を言うならば、特に攻撃においては、理想的なものを追い求めていたと思う。

 「バントばかり」と采配を揶揄するものも多かったが、本当にそうだろうか?犠打数94はリーグ5位と少ない。一方で、盗塁数はリーグ断トツトップの132だ。しかも、盗塁成功率78・1は、リーグ2位のソフトバンクの66・7%をはるかに上回っている。チーム打率・231はリーグ5位なのに、501得点は同3位なのだから、効率は決して悪くないだろう。

 仮にバントが多かったとしても、「バントは何も悪くない」と主張したい。確かに井口監督は、驚く奇襲戦法を好まなかったが、その分、俊足が出塁すれば盗塁、エンドランを多用し、カウントによって進塁打も重視した。まさに、強いチームの王道ともいえる作戦を貫いていた。

 誤算はチャンスをつくっても、走者を還せる打者がいなかった。マーティン、レアードが極度の不振に陥った。「頂点を、つかむ。」をチームスローガンに掲げ、開幕前から今季は「育成」でなく、「勝負」と宣言。ぶれずに最後まで突き進むと決めたことで、実績十分の助っ人砲の脱出を待つしか、手段がなくなってしまった。

 2年前の時点では、今季は安田、藤原がリーグを代表する打者になっていると想定しただろう。しかし、開幕前の時点で期待のプロスペクトたちが、思うような成長を示せなかったことで、井口監督は若手に切り替えづらくなった。結果的には才能ある若手を、本物のレギュラーに育成できなかったことが、最大のV逸の原因となった。

 交流戦から、チームは徐々に上向いた時期もあった。その原動力となったのは、ブルペン陣だったが、結局のところは序盤の借金を返すために、早めの継投が多くなり、夏以降は多くの救援投手が失速した。先発で規定投球回に達したのは、皮肉にも今季3勝11敗に終わった小島だけ。毎日、試合を見ている記者としては、このペースではシーズン最後までリリーフ陣はもたないと危惧した。これもまた、負の連鎖といえた。

 井口監督が辞任したことにより、古巣ダイエー時代や母校・青学大時代の同志たちだったコーチ陣は、今季限りで球団を去った。一部では、「お友達」とも皮肉ったが、これに関しては「別にいいのではないか」と思っている。どこの球団だって、監督の近しい人物がコーチにいるし、その理由は目指すべき野球を、共有できるからである。

 それでも、鳥越2軍監督は「5年間で優勝できなかった。結果を残せなかったということ」と、イースタン・リーグで昨年優勝、今年も2位に導きながらも辞任を選んだ。来季こそ井口監督がまいた種に、水をあげて、大きく育ててほしい。吉井新監督は選手のモチベーションを上げるのが、巧みな人物だ。(記者コラム・横市 勇)

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2022年10月15日のニュース