中畑氏 慎之助と鳥谷…指導者育成システム構築を

[ 2019年10月1日 08:30 ]

ファンの声援に手を振って応える阿部(撮影・森沢裕)
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 【キヨシスタイル】阿部慎之助が今季限りで引退する。代打だけならまだ十分いけるけど、ここで引退し、指導者の道に入る。原監督との話し合いの中で納得できたんだろうね。

 原監督は1995年に現役を引退。99年、長嶋監督の下で野手総合コーチに就任し、2000年から2年間ヘッドコーチを務めた。02年に監督就任し、いきなり日本一。しっかり準備期間を置いて成功した最高の例だ。

 その点、前監督の高橋由伸は気の毒だった。15年オフ、現役を続けるつもりだったのに無理やり引退させられて、いきなり監督だよ。優勝できないまま3年で退任。慎之助にはその轍(てつ)を踏ませないようしっかり準備期間を与えたかったんじゃないかな。

 同時に慎之助頼りのチームから脱皮させるという狙いもあったような気がする。5年ぶりの優勝を機に慎之助のチームから坂本勇人のチームへ。巨人にとっては最高のタイミングだと思う。

 私が引退したのは89年。ケガで離脱している間に岡崎郁や駒田徳広が大活躍してさ。夏場の試合でファインプレーしてベンチに戻ったら、打撃コーチの松原誠さんに次の打席で交代すると告げられた。ロッカーでバット振り回して大暴れ。3分ほどでスッキリした。戦力としての自分の役割は終わったと思ってね。

 それからベンチで応援団に徹したら当時の藤田元司監督が「やめてもいいからコーチとして手伝ってくれないか」と言ってくれてね。引退後はネット裏を選んだんだけど、おかげで横道にそれることなく、野球を中心として生きてこられた。

 慎之助も控えに回っても腐ることなく、代打や一塁守備の準備をし、キャプテンの勇人やバッテリーにアドバイスを送った。原監督もそんな姿を見て「後継者」に指名したんじゃないかな。

 それに引き換え…。引退勧告を拒否して阪神を退団する鳥谷敬は引退するメッセンジャーに花束を贈っていた。球団がちゃんと話をしていたら、贈られる立場だったんじゃないの?

 監督候補なんてそういるわけじゃない。選手だけじゃなく、指導者の素養を持った人材を育て上げる。そんなシステムが野球界の常識にならないものかな。(スポニチ本紙評論家・中畑 清)

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2019年10月1日のニュース