漆原大晟 クローザー未経験からウエスタンセーブ王 育成ルーキー、意識改革で成長

[ 2019年10月1日 05:00 ]

オリックスの漆原大晟投手
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 オリックスの次世代スターを発掘する当コラム。第22回目は漆原大晟投手を取り上げる。

 9月27日、ウエスタン・リーグの全日程が終了した。育成の場に使われるこのリーグで、成績面で特に目を引いたのが漆原だ。39試合に登板し、1勝23セーブ。23セーブは、2位の斉藤(阪神)が8セーブだったことを考えると、断トツのタイトル奪取。「ケガなく1年間投げきれたのはよかったです。アピールを続けることが目標だったので」と自らに合格点を与えた。

 新潟医療福祉大から育成ドラフト1位で入団。育成選手といっても球の力は他の投手とも遜色ない。重たそうな直球の威力は、すでに春のキャンプ中から話題になっていた。その漆原に転機が訪れたのは4月下旬のころだ。ウエスタン開幕当初にクローザーを任されていた金田が1軍昇格。次は誰にそのポジションを託すか、で何人かいた候補の中から首脳陣は漆原を指名。そのまま、シーズンの最後までクローザーの役割を果たした。

 もちろん、大学までのアマチュア時代でクローザー経験はない。「最初は分からないことばかりで、抑えないといけないと思うと焦ってしまって、ドッシリと構えられなかった」という。毎日、ブルペンで準備し、登板に備えるのは経験がないと難しい。特にシーズンを通して安定した成績を残すのは、ルーキーではかなりのハードルだったと思うが、見事に成績を残した。「打たれても表情に出ない」とマウンド姿を評価していた小林2軍投手コーチは、「夏場に苦しい時期があったが、よく耐えたと思う。ウエスタンで39試合だから、練習試合も入れると40試合は超えている。1年目なら十分な成績」と認めていた。

 経験の少なさを埋めるため、先輩投手に助言を求めて日々改善した。「3人で打ち取りたい」という欲を捨て「とにかくゼロで抑えよう。そのためには先頭打者を抑えよう」と意識を変えた。春季キャンプのときに「落ちなくなった」と悩んだフォークも握り方なども改良し、イメージを変えて武器とした。

 正念場は夏だった。「オールスター前に体重が落ちてしまった」と、84~85キロだった体重は80キロまで減少。栄養士とも相談して間食を増やしたり、就寝直前にも軽食を取るなど必死に戻した。「後半は納得のいく球が投げられた」と、自己最速を1キロ上回る152キロもマーク。苦しい時期を乗り越えて成長できた。

 「個人的には負けが付かなかったのが、一番良かった点です。ビジターで一発を食らうと逆転の場面もあって、追いつかれたことはありましたが、何とか踏ん張れた」

 確かに無敗は立派な数字だ。連打を食らった後に、間の取り方を変えるなどテクニックにも磨きをかけた。「コツコツやってきたことがつながっていると思う。けど、過信せずに、次のステップを目指してやりたい」。まずは目標の支配下選手登録へ。今季の新人は全員1軍デビューを果たしただけに、2軍成績では納得できないだろう。来季は3・52だった防御率の改善がテーマ。いつか1軍の舞台でも、9回の登場を夢見ている。 (当コラムはスポニチホームページで不定期連載中)

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