×

15分30秒…麻也主将が思いの丈「日本全体で戦っている気持ち」渋谷スクランブル交差点を映し出したワケ

[ 2022年12月5日 06:19 ]

FIFAワールドカップ(W杯)カタール大会

<サッカー日本代表練習>練習に汗を流す吉田(左)ら(撮影・西海健太郎)
Photo By スポニチ

 5日に決勝トーナメント1回戦クロアチア戦(6日午前0時キックオフ)を迎える日本代表は4日、ドーハ市内で最終調整を行った。主将のDF吉田麻也(シャルケ)にとっては2度目のラウンド16決戦。その大一番を前に、15分30秒もの間、思いの丈を口にした。

 「どうあがいても自分は長谷部誠にはなれない」

 麻也の主将としての第一歩は涙で始まった。18年7月3日、ロシア・カザン。ロシアW杯決勝トーナメント1回戦でベルギーに敗れた翌日に日本代表引退を表明した長谷部からバトンを渡された麻也は、人目をはばからず号泣して前任者の偉大さを口にした。

 「当初は長谷部さんを意識していた。でも明確に覚えていないけど、あるときから比べなくなった。自分には自分の良さがあると思えた」

 21年アジア最終予選サウジアラビア戦では差別的行為をした相手サポーターに怒り狂った。負けた試合では「W杯出場を逃せば代表を引退する」と、国を背負う覚悟と責任を口にした。冷静さがウリだった長谷部とは違い、ユーモアを持ちつつも前面的に闘志を出すキャプテンになった。

 前任者の陰を追うことを止めたが、それでも付きまとう陰はあった。どれだけ欧州でのキャリアを築いても、必ず元日本代表DF田中マルクス闘莉王と同DF中沢佑二の2人と比較された。

 「やはり中沢さんと闘莉王さんの亡霊を追いかけ、2人を追い越したいと思っていた。僕はよく言っているけど、選手にはクラブでのキャリアと代表でのキャリアがあると思っている。代表で何をしたか、どこにいったかが大事。僕は2人を抜けていない」

 10年南アW杯で決勝トーナメント進出を果たしたCBコンビが、いまだ歴代最強という声があるのは知っている。だから「このベスト16の壁を破った時に、そこにたどり着けるんじゃないか」と口にした。冨安健洋や板倉滉ら底知れぬポテンシャルを持つ後輩が控えているだけに「(歴代最高CBの勲章は)一瞬だと思いますけどね。すぐに抜かれる。それでも一瞬はなれるので」と笑わせたが、その目は本気だった。

 主将就任後は「日本サッカー」というフレーズを多用するようになった。日本代表の枠を超えた国全体を意識した発言も増えた。スペイン戦に勝利した直後のロッカールーム。渋谷スクランブル交差点の定点カメラにアクセスし、勝利に沸くサポーターの姿をのぞき込む映像を撮られた。

 「FIFAが勝手に(動画を)出しちゃった」と言いつつ「渋谷がそうかと言われれば分からないけど、日本全体で戦っている気持ちなので。新型コロナもあって一体感を感じる機会が少なかった。そこの恋しさがある。何年か前の埼玉スタジアムはいつも満員になる時代があった。それを少しでも感じるためにスクリーンに出した」。日本のサッカー熱が上がってほしいと願う気持ちからだった。

 「ロシアW杯は3試合(1次リーグ)が終わった時点で、精神的にも疲弊していた。それを経験したからこそ“それくらいハードになるよ”という気持ちの準備と余裕がある。4年前よりもコンディションは良い」

 1次リーグでドイツとスペインに勝っても、クロアチア戦の勝利は約束されているわけではない。耐える時間もあれば、臨機応変な対応が求められる瞬間もある。それでも恐れることはない。

 「歴史の新しい1ページを刻みたいのは皆、同じ。このチャンスは4年に1度しか来ない。これを逃すわけにはいかない」。その先には歴代最高主将、歴代最強センターバックの勲章が待っている。 

続きを表示

この記事のフォト

2022年12月5日のニュース