「鎌倉殿の13人」撮影3日間“雪の大階段”の舞台裏 リアルな規模感 天井からブリザードマシンの荒技も

[ 2022年11月27日 20:45 ]

大河ドラマ「鎌倉殿の13人」第45話。雪が降り積もる鶴岡八幡宮の大階段。対峙し、見つめ合う公暁(寛一郎・左)と源実朝(柿澤勇人)(C)NHK
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 俳優の小栗旬(39)が主演を務めるNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(日曜後8・00)は27日、第45回が放送され、ついに鎌倉最大のミステリーにして鎌倉最大の悲劇「実朝暗殺」が描かれた。建保7年(1219年)1月27日、雪が降り積もる夜の鶴岡八幡宮大階段。安寧の世を目指した3代鎌倉殿・源実朝は志半ばの夭折。今作最大のクライマックスの1つとなった同回を演出した安藤大佑監督に撮影の舞台裏を聞いた。

 <※以下、ネタバレ有>

 稀代の喜劇作家にして群像劇の名手・三谷幸喜氏が脚本を手掛ける大河ドラマ61作目。タイトルの「鎌倉殿」とは、鎌倉幕府将軍のこと。主人公は鎌倉幕府2代執権・北条義時。鎌倉幕府初代将軍・源頼朝にすべてを学び、武士の世を盤石にした男。野心とは無縁だった若者は、いかにして武士の頂点に上り詰めたのか。物語は、江戸幕府まで続く強固な武家政権樹立を決定づけた義時と朝廷の決戦「承久の乱」へと向かう。三谷氏は2004年「新選組!」、16年「真田丸」に続く6年ぶり3作目の大河脚本。小栗は8作目にして大河初主演に挑んだ。

 第45回は「八幡宮の階段」。右大臣に昇進した3代鎌倉殿・源実朝(柿澤勇人)は拝賀式を終え、鶴岡八幡宮の大階段を下り始める。「覚悟!義時!」。大銀杏の陰に潜んでいた公暁(寛一郎)が列を襲撃。太刀持ちを斬りつけた。しかし、太刀持ちは公暁が狙った北条義時(小栗)から源仲章(生田斗真)に入れ替わっていた。仲章は悲鳴。公暁の門弟に背後から刺されると血を吐き「寒い…。寒いぞ…。寒いんだよー!」。公暁は人違いに気づいたものの、仲章にトドメを刺した。

 そして対峙し、見つめ合う実朝と公暁。実朝の脳裏には“おばば”こと歩き巫女(大竹しのぶ)の声がよみがえる。「天命に逆らうな」――。実朝は北条泰時(坂口健太郎)に手渡された小刀を落とし、公暁に向かって頷いた。

 公暁が斬りかかり、実朝の血が雪を赤く染める。「阿闍梨公暁、親の敵を討ったぞ!」。しかし、読み上げる途中に声明文を実朝の亡骸の上に落としてしまい、血がついて読めない。義時は「斬り捨てよ!」。公暁は警固の兵から逃げた。

 政子(小池栄子)は長男・源頼家(金子大地)に続く息子の悲運に呆然自失。実朝の乳母・実衣(宮澤エマ)は怒髪天衝。そこへ千世(加藤小夏)が現れ、政子に紙を差し出した。「出(いで)ていなば 主(ぬし)なき宿と なりぬとも 軒端(のきば)の梅よ 春を忘るな」…。最愛の夫の別れの、辞世の歌だった。

 第45回を担当するにあたり、安藤監督は「非常に有名な歴史的事件ですし、鎌倉で繰り返されてきた悲劇の、ある種の最絶頂を描くことに、演出としては単純に武者震いしました。同時に、雪の夜の大階段というシチュエーション自体、物理的に撮影が難しくなるのは容易に想像できたので、責任とプレッシャーも大きかったです」と述懐。「だからこそ、早い段階から美術さんや技術さん、スタッフと準備を進めていきました。一方で、義時と義村は大事件の勃発を目の前にしても、至極冷静。引いた視点で事の成り行きを見つめていますよね。大事件と冷ややかな2人の温度差も大事にしたいと考えました」と演出プランを練った。

 オンエア上は約10分間にわたった、仲章と実朝が討たれ、公暁が逃げるまでの一連のシーン。撮影はたっぷり丸3日をかけた。

 「大階段」はNHK内のスタジオにセットを組み「現地に足を運べば実物の“規模感”が分かりますし、なるべくそれを目指したい。階段上と階段下は別々のセットを合成することで、規模感を出し、長さや傾斜もリアルを追求しました。実朝の最後の舞台が際立つように、スタッフの総力戦でプランニングしました」と狙いを説明。

 終始、大階段に雪が降り続ける大掛かりな撮影。雪の表現は、画角や狙いに応じて様々な方法を使い分けた。「演者さんの近くに脚立を立てられる時は、昔ながらの手降らし。アングルによって素材の違う雪を使い分け、脚立に上った特効(特殊効果)さんが狙いを定めて手で降らせます。広い画角の場合は、離れた場所から泡を飛ばすブリザードマシンを使いました。軽くゆっくりと落ちる泡は雪が舞っているように見え、しかも自然に消えるのでリアリティーが出せます。大階段はスタッフが隠れようもない特に広い空間なので、マシンを天井から吊るす荒技も駆使しました。ただ、機械の音が大きく、今度は台詞が聞き取れないとか、アフレコ(台詞を別収録)にするかとか、各セクションのせめぎ合いになって。現場に入ってから雪の段取り1つ1つに対応し始めると、いくら時間があっても足りませんから、早めに意思疎通を図りました」と腐心を明かした。

 安藤監督が演出し、梶原景時(中村獅童)の退場回となった第28回「名刀の主」(7月24日)のラストも雪だった。

 「あそこは台本に指定があったんですけど、その前に担当した19回(果たせぬ凱旋、5月15日)のラスト、義時と時政(坂東彌十郎)に再会した義経(菅田将暉)が去る時の雪は、僕がお願いして発注しました。28回のラストシーンを撮りながら、意図せず19回と演出がかぶっちゃったな、と思ったのですが、また一人、重要人物を見送る義時の背中が印象的で、結果的に19回と28回がつながって見えたらいいかな、と感じたのを覚えています」

 今作は雪に縁があった安藤監督。セット面もこだわり抜いた“神回”となった。

 ◇安藤 大佑(あんどう・だいすけ)2008年、NHK入局。最初の赴任地・佐賀局時代の10年には、ショートドラマシリーズの一編「私が初めて創ったドラマ 怪獣を呼ぶ男」(主演・星野源)の作・演出を手掛けた。12年からドラマ部。大河ドラマに携わるのは13年「八重の桜」(助監督)、14年「軍師官兵衛」(助監督)、17年「おんな城主 直虎」(演出・1話分)に続いて4作目。「鎌倉殿の13人」は第10回「根拠なき自信」(3月13日)、第14回「都の義仲」(4月10日)、第19回「果たせぬ凱旋」(5月15日)、第24回「変わらぬ人」(6月19日)、第28回「名刀の主」(7月24日)、第45回「八幡宮の階段」(11月27日)を担当した。

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