名高達男 しわに刻んだ男の美学「生涯現役 自分の気持ちと思いが乗る役をやりたい」

[ 2022年8月21日 06:00 ]

笑顔を見せる名高達男(撮影・西海健太郎)
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 【俺の顔】りりしい顔立ちでハンサムな役どころはもちろん、こわもてや三枚目など変幻自在の演技力で第一線に立ち続ける俳優名高達男(71)。サプライズ続きの役者生活の中で、追い求めるのは“男の美学”。骨太な生きざまを振り返った。(小田切 葉月)

 浅黒くハリのある肌に、キリリとした太い眉。そして二重の大きな目からは、71歳とは思えない若々しいオーラを放っている。端々に感じるダンディーな色気に加え、1メートル83の高身長。私生活でも、さぞかし女性から人気だったのだろう。予想は見事的中。「そりゃあモテたよ」。豪快に笑う目尻には、深く刻まれた笑いじわがあった。

 「人間には“いいしわ”と“悪いしわ”がある。なるべく、いい方だけがあるように心がけていますね」

 “いいしわ”とは笑いじわなど、喜怒哀楽によって生まれたもの。逆に“悪いしわ”とは、感情の変化とは全く関係ない場所にできる顔のたるみなどを指す。「パッと見て、年取った?とか言われたくないしね。髪の毛や眉毛はブラッシングして、肌のケアもしっかりしてる。でも、詳しいことは内緒だよ。男がベラベラと明かすことじゃないからね」

 変化と刺激の多いキャリアを歩んできた。実家は京都で鉄工所を営んでおり、自身は技術職を目指して石川・金沢工業大に進学。卒業を間近に控えた頃、金沢駅で一人の男性に声を掛けられた。「目つきが鋭くて怖かったけど、実は東京のモデルさん。“君、大阪のモデル?”って聞かれて、そこから始まった」。当時まだ学生。その“勘違い”から、世界が180度変わった。東京でモデル業を開始し、その後1976年放送のTBS「婚約時代」で俳優に転身。「あの出会いがなければ今頃、京都でエンジニアやってたでしょうね。人生なんて本当に一瞬だよ」とうなずいた。
 
 80年からスタートしたテレビ朝日「ザ・ハングマン」シリーズでは主人公を熱演。精悍(せいかん)なスタイルの二枚目でありながら、おちゃめでコメディーチックな場面も演じることができ人気を博した。当時は「達郎」の名で活動していたが、94年に美輪明宏(87)の勧めで現在の「達男」に改名。戦国武将の徳川家康と総画数が同じで、「世が世なら天下を取れる名前みたいです」と笑う。改名の一端には、86年に起きた元ミス日本の女性との婚約破棄があった。美輪からは「名前が足を引っ張って、運気が乱れている」と言われたという。

 「あの時は“なんで婚約破棄したんだ!”ってずいぶんマスコミに追われましたね。フィリピンとか海外に逃げてもダメでした(笑い)」。さまざまな臆測が飛び交う一件だが、いまだ名高本人の口から原因は語られていない。「今後もしゃべることは一切ない。人を傷つけたくないので」

 9月13日から東京・俳優座劇場で開幕する舞台「俺は、君のためにこそ死ににいく」に出演する。太平洋戦争末期を舞台にした特攻隊員たちの青春や葛藤を描いた作品で、若者を特攻に行かせる選択をする中将役として登場。「若者たちが自分の愛する人や家族のために命をなげうち、いろいろな思いを抱えながら苦渋の決断をしていく役。男らしくて、絶対にやりたいと思いました」と意気込む。

 俳優人生46年。これからも、自ら演じていてドキドキするような役に巡り合いたいという。「生涯現役。人生も短いし、自分の気持ちと思いが乗る役をやりたいね」。人生経験は顔に出る。しわの数と深さの分、男としての美学があった。

《6年ぶりの舞台に気合 9・13開幕「俺は、君のために…」》舞台「俺は、君のためにこそ死ににいく」は、名高にとって6年ぶりの舞台出演作となる。今年2月に亡くなった石原慎太郎さん(享年89)が原作で、共演は石村とも子(64)ら。星組と月組でキャストが少々異なり、月組公演には酒井法子(51)も出演する。久しぶりの舞台で、名高も気合十分。「本番は役に合わせて、丸刈りで臨みます。老若男女、いろんな人に見てもらって、今の平和な日本について考えてほしいですね」と呼び掛けた。

 ◇名高 達男(なだか・たつお)1951年(昭26)2月9日生まれ、京都府出身の71歳。時代劇や現代劇と幅広く活躍し、近年では映画「アウトレイジ ビヨンド」(12年)やテレビ朝日「やすらぎの郷」(17年)などに出演。プライベートでは94年に17歳年下の一般女性と結婚。趣味はスキューバダイビング、野球、釣り。血液型A。

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