超考戦!渡辺王将、封じ手に1時間29分 永瀬王座、休憩前後に2時間17分 王将戦第3局第1日

[ 2021年1月31日 05:30 ]

スポニチ主催 第70期王将戦7番勝負第3局第1日 ( 2021年1月30日    栃木県大田原市・ホテル花月 )

初手を指す渡辺王将(左は永瀬王座)(撮影・会津 智海)
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 渡辺明王将(36)=名人、棋王との3冠=の開幕2連勝で迎えた第3局が始まった。先手の渡辺は飛車先の歩を突き合う相掛かりを選択。早くも午前中に前例から離れ、挑戦者の永瀬拓矢王座(28)とともに長考を繰り返す展開となった。午後6時に渡辺が35手目を封じて第1日が終了。第2日は31日午前9時に再開する。

 指し手の進行が遅い一方、両対局者の脳細胞はレッドゾーンでフル回転。気温3度の外気とは対照的な熱気が対局室にほとばしる。

 「昼食休憩から歩損がさらに1枚拡大してしまった。その代償を得なければ…」と険しい表情の渡辺は封じ手に1時間29分もの時間を投じた。対する永瀬も昼食休憩前後に2時間17分と、今シリーズ最長の熟考を刻んでいる。「う~ん、難しいのかなという気がしています」と、こちらも複雑な顔つきだ。

 8手目まではつい1週間前の第2局(大阪府高槻市)を先後入れ替えてコピー&ペーストした滑り出し。だが9手目は▲9六歩ではなく▲1六歩だった。左ではなく右サイドバックの攻撃参加。この手を見て永瀬は開始直後としては珍しい10分間の思考を強いられる。

 大田原では過去4勝1敗の渡辺。6戦全勝の掛川(静岡)に匹敵する相性の良さを誇るが、唯一の懸念はその1敗にある。郷田真隆九段と対戦した第64期(15年)第3局。今回同様開幕2連勝で迎えた大田原対局で初黒星を喫した。このシリーズは防衛に王手をかけていた第6局の最終盤に信じられない見落としを演じて逆転負けしたばかりか、最終局も落として失冠してしまった苦い経験がある。

 2連勝から王将位を失ったのは第7期(1958年)の升田幸三王将(対大山康晴前名人=3勝4敗)以来2人目。この失態を繰り返すわけにはいかない。「歩損の代償を得る手段を一晩考えます」と口元を結ぶ。

 切迫の思いは永瀬も同じだ。敗れれば3連敗。王将戦でここから逆転戴冠した猛者は過去にいない。「形勢は一晩しっかり考えて判断したいです」。一手一手が重い第1日が終わり、那須の上空は漆黒の闇に包まれた。(我満 晴朗)

 《封じ手は?》
 ▼正立会人・中村修九段 選択肢が多く難しいが▲8二歩ではないか。永瀬陣を乱すチャンス。
 ▼副立会人・佐々木慎七段 ▲8二歩だろう。相手の陣形を乱せるローリスク・ハイリターンな一手。
 ▼記録係・広森航汰三段 ▲8二角。封じ手でかなり時間を使っていたので、攻めに出るつもりのはず。

 《15期連続開催「ホテル花月」、初期は「手探り」》15期連続開催の地となった「ホテル花月」。最初の開催時を振り返った田代彰彦総支配人は「何もかも手探りで、ただただ時間に追われていました」。当時、デザートは対局者のリクエストを聞いてから用意したため「マスクメロンとのオーダーがあり、宇都宮の知人に百貨店で購入してもらい途中まで運んでもらったんですよ」と懐かしそうに話した。

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