“ここまで来て負けられない”準決勝は球史に残るドラマが生まれる

[ 2022年8月20日 04:00 ]

第104回全国高校野球選手権第13日・準決勝 ( 2022年8月20日    甲子園 )

98年、準決勝でサヨナラ勝ちに抱き合って喜ぶ松坂大輔投手(左から2人目)ら横浜ナイン
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 【秋村誠人の聖地誠論】今夏の甲子園も、残すところあと3試合となった。ここまで45校が姿を消し、残った4校は日本一まであと2勝。山頂はもうすぐそこに見えている。だからだろう。準決勝には、今も球史に残る激闘が数多くある。

 「ここまで来て負けられない」。そんな思いがチームを支配する。考えられないような力を発揮し、奇跡が起こる。

 高校野球史上最長試合として伝説的な試合となっている「中京商―明石中」の延長25回の激闘も1933年の第19回大会の準決勝だった。夏の3連覇を狙う中京商(現中京大中京)と、同年の選抜準優勝の明石中(現明石)が激突した。中京商・吉田正男、明石中・中田武雄の投げ合いで延長戦へ。スコアボード増設が間に合わず、延長17回表の「0」は職員が手で持っていたそうだ。

 あまりの激闘に、大会本部は選手の健康管理から延長戦の途中に「打ち切り」を提案したが、両校とも「相手がやめない限りはやめない」と答えたという記録が残っている。そこにあるのは「あと2勝で優勝」の思いではないか。ここまで来て負けられない、と。延長25回にサヨナラ勝ちした中京商は決勝も勝って夏3連覇を達成した。

 98年夏の準決勝では横浜(神奈川)が、明徳義塾(高知)を相手に終盤2イニングで6点差を逆転する劇的なサヨナラ勝ちを演じている。PL学園(大阪)との準々決勝で延長17回250球を投げたエース・松坂大輔が右腕のテーピングを外してリリーフのマウンドへ向かう姿は感動的だった。

 今夏の4校はどこが勝っても初優勝。第1試合では東北勢2校の対戦となり、東北勢の決勝進出が確定している。初めての白河の関越えはなるのだろうか。第2試合の近江(滋賀)は今年の選抜準優勝の雪辱を狙い、対する下関国際(山口)は準々決勝で選抜優勝の大阪桐蔭を下して勢いなら一番だろう。どこも、ここまで来たら負けられない思いは同じはずだ。

 コロナ下の甲子園。今夏は、ここまで出場辞退はなく45試合が行われている。あと3試合。熱い戦いを見守りたい。(専門委員)

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