【内田雅也の追球】邪飛が犠飛となった理由――阪神が失った決勝点

[ 2019年6月19日 08:30 ]

交流戦   阪神3―5楽天 ( 2019年6月18日    倉敷 )

8回1死二、三塁、右翼手・糸井がウィーラーの打球をキャッチするも右犠飛に(撮影・坂田 高浩)
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 阪神の敗戦につながる決勝点は犠飛、それも邪飛だった。

 3―3同点の8回表1死二、三塁。楽天・ウィーラーの右翼線への飛球を糸井嘉男はファウル地域で捕り、三塁走者の生還を許した。捕ればタッチアップの三塁走者を本塁送球で刺すのは絶望的な深い飛球だった。

 こうした場合、事前にベンチから邪飛を捕るのか、見送るのかの指示が出る。

 「ファウルフライは捕るな、と指示していました」と敗戦後、外野守備走塁コーチ・筒井壮は言った。「1点勝負の終盤ですから当然です。でも、そう簡単なプレーではありません。あれを見送れれば、最高でしたが」

 上空のボールを追いながら、足元の白線を越えたかどうかを見極めるのは確かに難しい。記者席から見ていた限りは、糸井は飛球を追いながら視線を下に落とし、ファウルかフェアかの判断をしたかに見えた。

 「ライン際は難しい。判断しきれなかったのだろう」とヘッドコーチ・清水雅治は思いやった。プロでも難しいのだ。

 「それに」と筒井が付け加える。「あの回、風が止んでいたんですよ」。瀬戸内の凪(なぎ)だろうか。

 この回、ブラッシュの左翼上空への高い飛球も高山俊のダイブ及ばず、安打となっていた。

 公式戦、年に一度の倉敷マスカットスタジアムだった。試合開始から中盤まで、右翼から左翼に向け、相当強い風が吹いていた。甲子園球場の浜風のようだった。

 筒井は言う。「それまで吹いていた風なら確実に押し戻されてフェアになっていました。もちろん、その都度、風は確認しますが、そんな難しさもあったんですよ」

 風が凪(な)いでいたのでファウルだった。風が吹いていればフェアだった。だが、いずれにしろ、犠飛となり決勝点は失っていたわけだ。風や凪と天の運を書いたが、これは仕方がない。

 映画『2番目のキス』を思う。ボストンの高校数学教師ベンはレッドソックスの大ファン。キャリアウーマンのリンジーを初デートでフェンウェイパークに誘う。帰り道、野球の魅力を語る。

 「野球で最高なのはインチキできないこと。世の中は運が通用する。ビジネス、音楽、アートはそうさ。人をだませるけど、野球は無理だ。(中略)数学みたいに規則的だ。勝つか負けるか、すべて明白だ」

 運不運ではなく敗れたのだ。嘆かず、明日を向けばいい。=敬称略= (編集委員)

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