激闘4時間37分!中田がV犠飛 “午前0時”のヒーローインタビュー

[ 2013年3月9日 06:00 ]

<台湾・日本>延長10回1死二、三塁、勝ち越し犠飛を放った中田(中央)はナインにもみくちゃにされる

WBC2次ラウンド1組1回戦 日本4―3台湾

(3月8日 東京D)
 耳をつんざく歓声が全身を貫く。こんなに興奮したのは初めてだ。延長10回の裏。守りに就く中田(日本ハム)は何度も、何度も右手を高々と突き上げる。23歳の若き侍が、興奮と歓喜の中心にいた。

 「ファンの声援があってこそ打てた。気持ちで打った。チャンスで先輩たちが回してくれたから…。うれしかった」

 時計の針が午前0時に差し掛かったヒーローインタビュー。東京ドームのボルテージはもう最高潮だ。それほどドラマチックな展開。B組1位の台湾との死闘に決着を付けたのが中田だった。同点の10回。1死二、三塁で打席が巡ってきた。打席に向かう前、阿部主将に「チャンスが来たと思うな。おいしいところが来たと思え」と耳打ちされた。肩の力が抜ける。ボールが見える。2ボールから3球目。内角に来た137キロ直球をぎりぎりまで引きつけ、こん身の力で振り抜いた。

 打球は左中間の最深部へ高々と舞い上がる。陽岱鋼のグラブに収まり、三塁から松田が決勝のホームを踏んだ。「彼の思いきりの良さが出た。あそこは最低でも犠飛を、と思ってた」。山本監督が最終選考で反対意見を押し切ってメンバーに加えたのは、こんな一打を打ってくれると信じていたからだ。宮崎合宿から3週間余り。すり足打法に改造し、ひたすらバットを振り込んできたのは、信頼に応えるためだ。

 阿部だけではない。土壇場の坂本のアドバイスも効いた。無死一、二塁で救援してきた巨人の林イーハウは2軍で対戦した覚えもない。坂本から「投球フォームの後ろが大きい」と聞いて「構え遅れないようにした」。だから内角に差し込まれなかった。4回の好機では遊ゴロで一塁へヘッドスライディング。「負けられない試合だから自然と出た」。侍の燃える心が大仕事につながった。

 1月に生まれた愛娘とはもう1カ月以上会ってない。現在は大阪の夫人の実家に帰省中。大阪での強化試合の際も会いに行かなかった。「今度顔を見られるのはいつになるか…」。日に日に変わる愛娘の顔は夫人からの写メールで見て愛娘との再会は世界一の侍になるまで我慢する。

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