藤子不二雄Aさんの“定位置”は生き続ける 行きつけ居酒屋「ファンに喜んでもらえる場所に」

[ 2022年4月9日 05:30 ]

藤子不二雄Aさんの行きつけだった居酒屋「第二力酒造」の店長・黒田哲郎さん(左)と藤子Aさん
Photo By 提供写真

 漫画家の藤子不二雄Aさん(享年88)の訃報から一夜明けた8日、生前に常連客として通っていた東京・中野の居酒屋「第二力酒蔵」の黒田哲郎店長が思い出を語った。

 藤子Aさんは、15年ほど前から麻雀仲間らと同店に通っていた。新型コロナウイルス感染拡大の影響で最近はあまり顔を出さなかったが、それ以前は月に2、3度のペースで来店していたという。

 約200席の広々とした店内。藤子Aさんは決まって、一番奥にあるテーブル席に座った。背中側の壁には「忍者ハットリくん」が描かれたサイン入りの掛け軸や、イラストが飾られ、厨房(ちゅうぼう)や店全体が広く見渡せる場所。他の客からいつも注目を集めていた。

 注文は、ベジタリアンだったため食事より酒が中心。地元・富山の日本酒「立山」や、芋焼酎「武蔵」がお気に入りで、トキワ荘の名物だった焼酎をサイダーで割る「チューダー」をたしなみながら「手塚治虫さんはやっぱり凄かった」などと思い出話に花を咲かせていたという。

 他の客らとの交流も大好きで、写真撮影やサインにも快く応じた。黒田さんは「子供と女性が来た時はいつも以上にニコニコしていた」と在りし日の様子を明かした。

 最後に訪れたのは半年ほど前。いつもと変わらず元気に食事や酒を楽しんでいたという。黒田さんは「その時は“腰が痛い”と言っていたけれど元気そうだった。“また来るね”とあいさつをしたのに…。それが最後の言葉になってしまった」と突然の別れをまだ受け止められずにいた。

 藤子Aさんが愛した定位置。黒田さんは「これからも先生が座っていた席の後ろには、サインやイラストを残していく。ファンの方々にも喜んでもらえるような場所にできれば」と願いを込めた。

 《富山県氷見市役所に献花台と記帳台》出身地の富山県氷見市でも、悲しみが広がっている。藤子Aさんは名誉市民にも就任しており氷見市役所では8日、弔意を示す半旗が掲げられた。8~14日は1階エントランスに献花台と記帳台を設置。この日は林正之市長が献花し、市民らも記帳に訪れた。市役所担当者は「市民にとって藤子Aさんは親しみのある存在でした」と話した。

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2022年4月9日のニュース