「ブラタモリ」南極回の裏側 最新技術で再現も“一発撮り”昭和基地隊員にタモリ直撃「あいつと二度と…」

[ 2022年1月8日 08:00 ]

「ブラタモリ」渋谷義人チーフ・プロデューサーインタビュー(中)

8日に放送される「ブラタモリ」のテーマは番組史上初の「南極」。タモリも興味津々(C)NHK
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 8日に放送されるNHK「ブラタモリ」(土曜後7・30)のテーマは番組史上初の「南極」。実際のロケは難しい場所の歴史や魅力を、最新技術を駆使して東京のスタジオにいながら探る新しい試みに挑戦した。制作統括の渋谷義人チーフ・プロデューサー(CP)に「南極再現」の舞台裏を聞いた。

 タモリが街をブラブラ歩きながら知られざる歴史や魅力、人々の暮らしに迫る看板バラエティー。今回は「インカメラVFX」という合成技術を用い、東京のスタジオに南極を“完全再現”した。「インカメラVFX」とは「3D制作した映像をスタジオの背景となる高精細LEDディスプレイに映し出し、カメラの動きと連動。リアルな臨場感ある合成を可能にする技術」。映画やドラマ、CMの撮影などに用いられる。

 番組は2019年1月に海外初進出(イタリア)したが、南極を扱うのは今回が初。「南極点のポールが2つある理由」「タロ・ジロ…日本人と南極の歴史」「南極に絶景が生まれる秘密」などを探り、旅のお題「~なぜ人はわざわざ南極を目指す?~」に迫る。昭和基地と中継を結び、タモリが南極地域観測隊から話も聞く。

 収録の様子について、渋谷CPは「スタジオで『ブラタモリ』を成立させるにあたって最も重要視したのが『いかにタモリさんに現場に行った気分になっていただくか』ということでした。通常の『ブラタモリ』のロケでは、番組の冒頭で出された“旅のお題”について、タモリさんがブラブラ歩きながら現地に残された景色や痕跡を見て、考え、答えに至るまでが基本的な流れですが、それと同じ体験をスタジオで再現する必要がありました。その際、これまで合成技術として多く用いられていた“クロマキー合成”では、グリーンバックなど1色の幕を背景に撮影し、後から映像を合成するため、撮影時に出演者が『自分がどんなところにいるのか』をイメージするのが難しいという難点がありました。それに対して今回使用した“インカメラVFX”では、LEDに背景映像が映り、さらにカメラの動きと連動した合成映像もリアルタイムでモニターで確認できるので、イメージしやすくなります。タモリさんも、南極をブラブラしたつもりになっていただけたのではないかと思っています」と述懐。

 「ただ“インカメラVFX”は、これまで映画やドラマ、CMなどで使われてきた技術で、『ブラタモリ』のようなバラエティー番組で使われた実績はほとんどありません。そのため、難しいこともありました。最も難しかったのは、映画やドラマの場合は合成やカメラの動きがうまく行かなかったら何テイクも撮り直しをすることができますが、「ブラタモリ」では撮り直しができない、ということです。タモリさんは事前に台本や内容を知らされておらず、案内人が出す謎解きにその場で考えて答えを出していきますが、そうした場におけるタモリさんの生の反応がすべてなので、一発勝負で撮り直しができないのです。そのため、映像の合成やスタッフの動きについては、細かい部分まで極力つめておく必要がありました。スタジオでは、タモリさんが入る前までに約1日半かけて準備しました」と明かした。

 昭和基地との中継も「ちょうど次の隊への引き継ぎを控え、受け入れ準備などでお忙しい時期だったのですが、『ブラタモリ』のために多くの調査隊の皆さんが集まり、ご協力いただくことができました。タモリさんは隊員の皆さんの暮らしぶりに興味を持たれたようで、 基地の食事や通信の事情などについて興味深くお話を聞かれたり、『閉ざされた空間に1年いて“アイツとは二度と口をききたくない”といったことは起こらないですか?』といった面白い質問もされていました」。一層、楽しみな回になりそうだ。

 =インタビュー(下)に続く=

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