ジョージ秋山さん死去 77歳 「浮浪雲」「銭ゲバ」手掛けた人気漫画家、新作構想中に容体急変

[ 2020年6月2日 05:30 ]

「浮浪雲」の主人公・雲 (C)ジョージ秋山/小学館
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 長期連載の「浮浪雲(はぐれぐも)」などで人気を博した漫画家のジョージ秋山(あきやま、本名秋山勇二=あきやま・ゆうじ)さんが5月12日、都内の病院で死去した。77歳。東京都生まれ、栃木県出身。死因は明らかにしていない。告別式は家族で行った。

 放送作家で長男の秋山命氏(50)によると、病気で療養しており体力は衰えていたものの、亡くなる直前まで次作の構想を練るなど気力は満ちていた。だが容体が急変し、命氏らが見守る中、息を引き取った。命氏は「父から“男は24時間働くんだ”と教わった。作品を後世に残すためにドラマ化や映像化など自分のできる役目を果たしていきたい」と話した。

 秋山さんは上京し職を転々とした後、漫画家森田拳次さん(81)のアシスタントになった。1966年に「ガイコツくん」でデビュー。講談社児童まんが賞を受けた漫画「パットマンX」などのギャグ漫画で人気を得た。赤塚不二夫さん(享年72)が「ライバル」と認めるほどのセンスで赤塚さんとは漫画論を巡ってテレビ番組で激しい口論を繰り広げたこともある。

 70年に発表した「銭ゲバ」「アシュラ」から、人間のモラルを問う作風へ一転。貧しい青年が金と地位を求めて連続殺人を犯す「銭ゲバ」は評判を呼び、映画化もされた。「アシュラ」は人肉食などの過激な描写が問題視され、一部の県で有害図書に指定された。

 休筆後、73年からビッグコミックオリジナルで「浮浪雲」の連載を開始。幕末の江戸を舞台にした人間味のある庶民の物語は、広く共感を集め、44年続く長寿のヒット作となった。ほかに「ピンクのカーテン」で背徳的な性欲を描くなどタブーを恐れなかった。

 師匠の森田さんによると、愛妻家で、妻に先立たれた時は仕事への意欲を失うほど落ち込んだという。森田さんは「物静かな男が“妻じゃなく師匠が死ねば良かった”と話すほど荒れた」と振り返る。長年親交のあった漫画編集者の綿引勝美さんは「酒を飲むと、禅問答のような問い掛けをするのが好きな先生。でもこちらが真剣に考えて返すと、のらりくらりとかわされ、まるで浮浪雲のようでした」としのんだ。

 ◆ジョージ秋山(じょーじ・あきやま、本名秋山勇二=あきやま・ゆうじ)1943年(昭18)4月27日生まれ、栃木県出身。東京・神田の書籍問屋に就職後、漫画の世界に。79年第24回小学館漫画賞を「浮浪雲」で受賞。独自の家族論や宗教観に基づく漫画やエッセーも手掛けた。私生活では海に魅せられ、自前のクルーザーで大海原を疾走。座右の銘は「小事を気にせず、流れる雲のごとく」。

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