【あの甲子園球児は今(10)神港学園・伊藤諒介】通算94発の強打者は“本塁打級”契約目指す営業マンに
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2010年、高校球界で一躍、注目を集めた球児がいた。神港学園(兵庫)の主砲として、当時の高校通算最多本塁打記録となる94本塁打をマークした伊藤諒介さん(30)だ。
「今、こうやって野球の話ができるのは、本当にうれしいですね」
ユニホームは、スーツに変わった。それでも、りりしい表情は当時と変わらない。19年11月に現役を引退し、以降は社業に専念。20年1月からは故郷でもある兵庫県姫路市内の営業所に勤務し、インフラ整備担当の営業マンとして、汗を流す日々を送っている。
12年前――。高校3年時の選抜1回戦・高知(高知)戦で、1メートル72、78キロ(当時)の小柄なスラッガーは広大な甲子園で高校通算67号となる豪快な右越え本塁打を放ち、「甲子園という大舞台でホームランを打てて気持ちよかった」と笑った。150キロ以上のスイングスピードを原動力にした桁外れの長打力が持ち味だった。2回戦で中京大中京(愛知)の前に涙をのんだものの、聖地に強烈なインパクトを残した。
選抜終了後も本塁打を積み重ね、6月3日の兵庫商(兵庫)との練習試合で、それまでの高校通算最多本塁打記録だった中田翔(大阪桐蔭)の87本塁打に肩を並べた。そして同24日の市尼崎(兵庫)との練習試合で、記録更新となる88号をマーク。最終的には、最多記録を94本まで伸ばしたのだった。
世間の注目を浴び続けながら、27本のアーチを架けた選抜後の約4カ月間。伊藤さんは12年が経過した今、改めて当時の心境を率直に吐露した。
「(いびつな形をした学校の)グラウンドのことなど賛否両論があり、高校時代は葛藤がありました。正直、注目されればされるほどつらいこともあり、嫌になりました。楽しくやっているだけなのに、放っておいてくれないかなと…」
当時の伊藤さんの胸中を支配していたのは「負の感情」だった。試合のたびに報道陣が姿を見せ、その言動が新聞、テレビで取り上げられる状況に、戸惑った。インターネットを開けば、自身への賛否両論が目に付いた。野球に没頭し、充実していた日々は、いつしか重圧を感じる日々へと変わっていった。まだ18歳の高校球児にとっては、苦痛でしかなかった。
とはいえ、30歳になった今では、あの日々をプラスに捉えることができるようにもなった。「人生において、ものすごく良い思い出になったことも間違いないです。誰もが経験できることではないですから。当時は嫌でしたけど、今は注目してもらえて良かったかなとも思えます」。激動の4カ月は、人生の糧にもなっている。
高校卒業後の野球人生も紆余(うよ)曲折あった。東京六大学リーグの名門・法大に鳴り物入りで進学し、1年春からリーグ戦に出場。だが1年秋に右肩を痛めてからは苦しい日々が続いた。ごまかしつつプレーを続けた結果、投げることが怖くなり、イップスを発症した。
「一番、好きだったキャッチボールも満足にできなくなって、野球が楽しくなくなりました。あの時期は本当に苦しかったです」
3年時には、ベンチ入りメンバーから外れたことさえあった。それでも腐りかけた自分との戦いに勝ち、結果的に精神面で成長を遂げた。大学卒業後は社会人野球の名門・大阪ガスへ。アマチュア最高峰のレベルで、2学年下の近本光司(現阪神)らとともにプレーし、都市対抗、日本選手権という2大大会優勝を味わった。そして19年11月、8歳から20年間、振り続けたバットを、静かに置いた。
「今、振り返ると一生懸命に野球に取り組めていた時間というのは幸せでした。ただ、それ以上にしんどいことも多かった。乗り越えた先の楽しさ、うれしさ、達成感というのはありましたけど、しんどかったというのも正直なところ。だから引退した時も、大多数の人は“もっとやりたかった”と引退するものですが、僕はホッとした部分の方が大きかったんです。自分としては、やりきった部分の方が大きかったんだと思いますね」
ユニホームを脱いだ今は営業活動に全力投球の日々。「仕事は楽しいです。特に初めて取った契約は忘れられないですね。営業車に戻って、思わずガッツポーズしてしまったくらいでした。野球で言えばホームランを打った時と同じくらい嬉しかったです」と、そのやりがいを元野球選手らしい言い回しで表現した。そして続けた。
「たとえばお客様に名刺を差し出した時に“あの本塁打の伊藤君?すごいじゃないですか”と言っていただけることもあります。今では、当時の話を仕事で使わせてもらっていますよ」。大人になった伊藤諒介は、そう言ってニヤリと笑った。(惟任 貴信)
◇伊藤 諒介(いとう・りょうすけ)1992年(平4)6月11日、兵庫県姫路市出身の30歳。手柄小2年からソフトボールを始め遊撃手。山陽中では姫路アイアンズで遊撃手を務め、主な成績は全国大会優勝、ジャイアンツ杯8強など。3年時にAA日本代表。神港学園では1年春から背番号13でベンチ入りし、3年春の選抜で本塁打。高校通算94本塁打。法大を経て、15年に大阪ガス入社。18年に都市対抗優勝、19年に日本選手権優勝を経験。19年11月に現役引退。1メートル74、83キロ(現役引退年)。右投げ左打ち。
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