選手のモチベーションをチームの推進力に “新庄船長”の巧みな人心掌握術

[ 2022年8月14日 07:30 ]

9日の西武戦で、上川畑の同点打にガッツポーズす新庄監督(左)と清宮(撮影・高橋茂夫)
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 日本ハム・新庄監督の人心掌握術が興味深い。選手のモチベーションを高め、試合に臨む選手の心を巧みに操っている。

 細かい制球に課題がある2年目左腕・根本にも絶妙な例えで助言した。「オールスターのホームラン競争見た?“ホームラン打ってくださーい”ってボールを2分打って3本しか入らないんだから。その気持ちで“打ってください”でストライク先行で投げてみ?そんなに打たれんから」。そんな助言を受けた19歳は、7日のオリックス戦で6回2/3を投げ、3四球こそ与えたが、5安打1失点で今季2勝目を挙げた。

 9日の西武戦では、正遊撃手獲得へ猛アピール中の上川畑が新型コロナウイルスの陽性判定から復帰。即スタメン起用されるかと思われたが、新庄監督はあえて中島を起用した。「(コロナ陽性判定前に)ずっと出ていた上川畑くんが帰ってきても“僕がショートでやったろう”って気持ちを見たくて」と説明。選手の競争心をあおる起用で闘志に火をつけている。

 そして、上川畑はこの試合で代打起用された8回にチームを救う同点打。9回の近藤の逆転サヨナラ3ランにつなげた。すると「明日(10日)はショート・上川畑くんかな。こういうところで打てばゲームに出られるんですよ。今日中島くんがいいプレーをしていたら明日も中島くんを出して、上川畑くんをセカンドにしようと思っていた。こういう争いが見ていて楽しいし、チームがもっともっと強くなるポイントだと思う」と狙いを力説した。

 新庄監督は球宴明けからメンバーを固定して戦う方針を明言した。だが、コロナ禍や故障者続出で現時点でメンバーの固定はできていない。そんな中でも善戦が増えてきた後半戦の戦いを振り返り「精神的な成長はかなりできていると思います。本当によくやってますよ。前半戦にいろいろ選手に経験をさせて、それが本当に大きかったんじゃないかな。あの経験がなかったらこういうゲームはできていないと思う。やったことは間違ってなかったな」と選手の成長に目を細める。昨秋の監督就任時「ボロい船」と表現したチームは、船長が補修を繰り返し、推進力のある船に変わりつつある。今季どのような形でシーズンを終え、来季に向けて期待を抱かせてくれるか。今後もモチベーターとしての手腕に注目していきたい。(記者コラム・東尾 洋樹)

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2022年8月14日のニュース