【内田雅也の追球】「意味のあるアウト」を重ね、序盤での大量得点につなげた阪神

[ 2022年7月14日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神13―0巨人 ( 2022年7月13日    甲子園 )

<神・巨>初回1死一塁、佐藤輝は三塁内野安打を放つ(投手・メルセデス)(撮影・北條 貴史)
Photo By スポニチ

 野球は9回、27個のアウトを取られる間にいかに多く得点できるかを競う。1つのアウトにどんな価値を付けられるかが得点へのカギとなる。

 相手投手に多くの球数を投げさせた、走者を進めたといったアウトだ。

 阪神はこうした「意味のあるアウト」を重ね、序盤での大量得点につなげた。順にあげると――

 <1回裏>
 ▽無死一塁。島田海吏がバスターから二ゴロで走者二進。
 ▽1死一塁。佐藤輝明の三ゴロが内野安打となり、スタートを切っていた一塁走者・近本光司が三塁を奪った。
 ▽1死一、三塁。糸原健斗投ゴロが併殺崩れとなり、三塁走者生還。

 <2回裏>
 ▽1死二、三塁。近本の一ゴロが敵失を誘い、三塁走者生還。
 ▽再び1死二、三塁。佐藤輝が右犠飛。

 <3回裏>
 ▽1死一塁。西勇輝が投前送りバントを決め、続く左前打で追加点。

 ――といった具合だ。

 島田は2番打者として右方向に引っ張り転がす打法が身についてきた。

 佐藤輝三ゴロは2ボール2ストライクから近本スタート(盗塁か)。インハイ直球に詰まったボテボテゴロは遊撃前に転がったが、遊撃手は二塁カバーに動き、右寄りシフトを敷いていた三塁手が処理。走者を動かして事を起こしたわけだ。

 近本一ゴロ時、三塁走者・中野は好スタートを切り、相手は焦った。

 巨人V9当時から名参謀と呼ばれた牧野茂はこうした凡打には年俸査定でプラス点をつけた。今では当然だが、60年代から行っていた。

 妻・牧野竹代編『牧野茂日記』(ベースボール・マガジン社)に原辰徳(現巨人監督)が入団した81年の日記がある。2月14日にフロントと「選手貢献度」打ち合わせ。5月3日、阪神戦(後楽園)で9回裏無死二塁で淡口憲治が進塁打を転がし<淡口の二ゴロが何でもなく打てたことが巨人の進歩とみる>。

 組織活性化が専門の順天堂大名誉教授、北森義明との対談=労働省『労働時報』80年3月掲載=で「敗因より勝因分析」と語っている。「弱いチームは“勝った、わあ、よかった”で終わり。勝った時の特徴を拾い出して選手に覚え込ませる」

 阪神はなぜ大勝できたのかをよく分析しておきたい。=敬称略=(編集委員)

続きを表示

2022年7月14日のニュース