【内田雅也の追球】攻略の“三塁寄り”狙い 見事なノーヒッター腕・今永KO劇

[ 2022年6月18日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神7ー5DeNA ( 2022年6月17日    甲子園 )

<神・D>初回、阪神・中野は左前打を放つ(撮影・大森 寛明)
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 難敵のDeNA左腕・今永昇太を攻略した阪神各打者の打撃には、ある狙いが見えた。

 前回登板の7日・日本ハム戦でノーヒットノーランを達成した今永との対戦に向け、阪神も相当対策を練っていたことだろう。記者としても攻略を考えていた。

 ジャパンベースボールデータ(JBD)の統計サイト「翼」で今季過去5試合、今永の球種・コース別成績をみる。チャート(配球図)は内角・真ん中・外角に高め・真ん中・低めのストライク9分割に加え、外周のボール球も加えた25分割。各コースとも被打率を色分けしており、紺、青、水色、緑、黄色、オレンジ、赤……と打率が高くなるほど赤い。

 全球種、左右両打者の全投球で見ると本塁プレートの“三塁寄り”が赤みがかり、黄色、緑も見られる。一方“一塁寄り”は青く染まっていた。

 トータルの被打率は125打数25安打の・200。右打者の内角は13打数4安打(・308)だが、外角は18打数無安打と打てていない。遠くに沈むチェンジアップがあり、やっかいなのだ。だから右打者は・153と苦戦していた。合計・264の左打者は真ん中21打数6安打(・286)と外角の19打数5安打(・263)。一方、内角は1打数1安打と結果球は1度しかなかった。

 この傾向から、左打者は真ん中から外角球を反対方向へ、右打者は内角球を引っ張るという攻略法が浮かび上がる。“三塁寄り”狙いである。

 1回裏の速攻はこの狙いに沿っていた。左打者の島田海吏、中野拓夢はともに外角球を中堅から左に連打。2死満塁から左の糸原健斗の左翼線2点打は追い込まれてからの内角速球。異例だが糸原らしい手さばきだった。そして右打者の山本泰寛の2点二塁打は内角フォークを振り抜いて左中間に運んだ。

 さらに、大山悠輔は3回裏2死無走者、6回裏先頭で、ともに初球の内角速球を左翼席に運ぶ連続本塁打を放った。1発目は内角球に、うまく腕をたたんで振り抜いた。これもまた“三塁寄り”を狙った一撃だった。2発目は、今永が打たれた同じ球で来ると、また狙っていたのだろう。

 阪神が本当に“三塁寄り”を狙っていたのかは分からない。見事な狙い通りと映る見事なKO劇だった。=敬称略=(編集委員)

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2022年6月18日のニュース