「舞いあがれ!」たこ焼きパーティー場面 制作統括「結構ハイブロー」

[ 2022年11月8日 08:30 ]

連続テレビ小説「舞いあがれ!」で舞(福原遙)らがたこ焼きパーティーに臨む場面(C)NHK
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 【牧 元一の孤人焦点】8日放送のNHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」第27回で、ヒロイン・舞(福原遥)が所属する人力飛行機サークル「なにわバードマン」の部員たちがたこ焼きパーティーを開く場面が描かれた。

 制作統括の熊野律時チーフプロデューサーは「減量していた舞が、記録飛行の本番を前に久しぶりに炭水化物を取るという流れで、脚本の桑原亮子さんから『そこはみんなで一緒に食べた方が楽しそう』という意見が出た。彼らだったら何を食べるだろう?と考え、よく大学生は学園祭で出店してお金を稼いで部費に回しているという話になり、じゃあ、たこ焼きを焼くことにしよう、という感じになった」と振り返る。

 パーティーの場面は明るい雰囲気で始まる。ところが、途中から全く別の様相を帯びて来る。部員の鶴田葵(足立英)、玉本淳(細川岳)、由良冬子(吉谷彩子)、刈谷博文(高杉真宙)がそれぞれ人力飛行機「スワン号」への思いを語ったからだ。期せずしてみんなの熱い思いを聞くことになった舞は感極まって目から涙をあふれさせる。

 楽しい場面を自然な流れで感動的な場面へと変化させる巧みな脚本だ。

 熊野氏は「たこ焼きパーティーでみんなが本番を前に盛り上がるシーンになるかと思いきや、舞がみんなの思いを一つ一つ受け止めていくシーンになった。結構ハイブローだと思う。そういうふうに組み立てていく桑原さんの脚本には独特の面白さがある」と語る。

 このドラマの第1回から第27回までを見て感じるのは脚本の繊細さだ。物語の展開を良くするために急ぎそうなところを急いでおらず、物語を盛り上げるために大きく振りかぶりそうなところも適度な振りかぶりにとどめている。

 熊野氏は「桑原さんは登場人物それぞれの気持ちを丁寧に描いている。セリフにするところとセリフにしないところを含めて独特の味わいがある。言葉にしない方が良いところはセリフせず、役者さんのお芝居に任せてあえて語らないところがある。特に難しい言葉を使うわけではなく、秘められていた気持ちをすっと易しい言葉で表す。ドラマチックなことがそんなに多く起きるわけではない。ささやかな日常の中で感じることにしっかりと言葉を与えている。登場人物の気持ちが分かる脚本にしてくれている」と話す。

 ドラマはストーリー展開も大事だが、登場人物たちの多様で微妙な心の動きを味わえることも大切だということを実感できる作品になっている。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局総合コンテンツ部専門委員。テレビやラジオ、映画、音楽などを担当。

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2022年11月8日のニュース