新之助 貫禄の初舞台 團十郎「泣かされた」 父と同じ演目で…9歳ノーミス早口演技

[ 2022年11月8日 05:00 ]

東京・歌舞伎座で行われた襲名披露公演で「昼の部」の「外郎売」に出演した八代目市川新之助(C)松竹
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 先月末に大名跡を襲名した十三代目市川團十郎白猿(44)と、長男の堀越勸玄改め八代目市川新之助(9)が7日、東京・歌舞伎座で襲名披露興行(28日まで)の初日を迎えた。新之助にとってはこの日が初舞台。小さい体ながら貫禄たっぷりの演技で満員となった約1700人を魅了した。

 昼の部「外郎売(ういろううり)」。花道から姿を現し「私の名は市川新之助にござりまする~」と名乗りを上げると、大きな拍手が鳴り響いた。

 1985年に父が「新之助」として初舞台を踏んだのも同演目。ただ、当時は十二代目市川團十郎さんに連れ添われての登場。今回は新之助が一人で主役として登場した。

 最大の見せ場となる早口言葉の場面では共演の尾上菊五郎(80)や観客が固唾(かたず)をのんで見守った。静寂の中、「武具馬具武具馬具三武具馬具(ぶぐばぐ ぶぐばぐ みぶぐばぐ)」などとよどみないせりふ回し。6歳の時に初演した3年前と比べて余裕たっぷりの様子。なめらかに、抑揚もつけながら約3分間の長せりふをやり遂げた。その後も見えや立ち回りを見せるたびに拍手を一身で受け止めた。

 息子の雄姿を見守っていた父・團十郎は自身のブログで「倅(せがれ)に泣かされました」とつづり感無量の様子。この日、姉の市川ぼたん(11)らと訪れていた祖母で十二代目の妻にあたる堀越希実子さんも「よく頑張っていました」と目を細めた。

 「夜の部」の口上では「ひとかどの歌舞伎役者になれるよう、一生懸命精進いたしまする」とあいさつ。歌舞伎俳優としての最初の一歩がついに始まった。

 ≪團十郎「にらみ」初披露≫團十郎は口上で「先祖の足元にも及びませんが、一生懸命努力して、精進したい」と大名跡の重みをかみしめた。先輩俳優たちからも愛のある言葉が寄せられた。菊五郎は「一時は暴れん坊将軍と呼ばれていましたが、今では歌舞伎十八番をつとめる立派な役者になられた」。片岡仁左衛門(78)も「十二代目と互いの家を行ったり来たりして、その時にうろうろしていた坊やが立派になられた」とほほ笑んだ。口上のラストには松本白鸚(80)から「皆々さまの無病息災を願ってしっかりとにらんでください」とうながされ、市川宗家に伝わる「にらみ」を團十郎として初めて披露した。

 ≪アナや声優も練習で使う言葉≫「外郎売」の長せりふは、アナウンサーや声優もトレーニングに使う。早口言葉としてはこの日、新之助も披露した「武具馬具武具馬具三武具馬具 合わせて武具馬具六武具馬具 菊栗菊栗三菊栗 合わせて菊栗六菊栗(ぶぐばぐぶぐばぐみぶぐばぐ あわせてぶぐばぐむぶぐばぐ きくぐりきくぐりみきくぐり あわせてきくぐりむきくぐり)」の部分が有名だ。

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