中井孝治氏 平野歩夢、不可解ジャッジに屈せず重圧の中で完璧な滑り

[ 2022年2月12日 05:30 ]

北京五輪第8日 スノーボード・ハーフパイプ男子決勝 ( 2022年2月11日    雲頂スノーパーク )

圧巻のパフォーマンスで金メダルを獲得した平野歩夢(撮影・小海途 良幹)
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 【スノーボード斬る・中井孝治】2回目を終えて2位。不可解と感じるジャッジに屈せず、極度のプレッシャーが掛かる最終滑走で逆転した平野歩は本当に素晴らしかった。おめでとう、そしてありがとうと言葉を掛けたい。

 トリプルコーク1440を含むルーティンを初めて通しきった2本目は、本人もなぜこの点数だと思ったはずだ。メンタルが崩れておかしくない状況で、3本目には有無を言わせない滑りを披露した。5発全ての技が完璧で、跳んだ瞬間に「勝った」というエアだった。高さも2本目よりも増し、100点満点が出てもおかしくないと思うほどだった。

 ジャッジに関してはあまり批判したくないが、改善されるべき点はあると感じた。2本目は6人いるジャッジの最高が96点、最低が89点。同じ2本目に92・50点を出したジェームズも素晴らしかったが、平野歩の史上初のルーティンを上回ったとは考えづらい。ジェームズには平野歩にはないスイッチバックサイド1260はあったが、3発目は2回転半止まりで、得点的には相殺されるはず。得点のばらつきを含めて改善の余地はある。

 完璧なパイプの状態なら誰が勝ってもおかしくないほど実力が拮抗(きっこう)する中、平野歩の調整力や対応力も光った。この日は2日前の予選よりもリップ(パイプの上端部分)の角度が開き気味。人間が削るものなので、どうしても変化などは生じる。多くの選手が転倒する中、1本目に転びながらもしっかり対応した。足が固定されないスケートボードに取り組んだことで、足裏の感覚や板のコントロールに磨きが掛かったこともプラスに働いたのではないかとみている。(スノーボード・ハーフパイプ五輪2大会連続代表、プロスノーボーダー)

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2022年2月12日のニュース