平野歩夢「怒り」飛び越えた大逆転の金メダル!五輪初「トリプルコーク1440」3発 スノボ男子HP

[ 2022年2月12日 05:30 ]

北京五輪第8日 スノーボード・ハーフパイプ男子決勝 ( 2022年2月11日    雲頂スノーパーク )

圧巻のパフォーマンスで金メダルを獲得した平野歩夢(撮影・小海途 良幹)
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 平野歩夢(23=TOKIOインカラミ)が最終3回目に96・00点をマークし、悲願の金メダルを獲得した。スノーボード競技の金メダル、冬季五輪3大会連続メダルは日本初。斜め軸に縦3回転しながら横に回る超大技「トリプルコーク1440」を含むルーティンを公式戦で初めて完遂し、暫定2位から最終滑走で大逆転した。昨夏の東京五輪スケートボード競技終了から、わずか190日。前例なき“二刀流”挑戦の末、夢をかなえた。

 原野に道を切り開くような4年間の挑戦の最後に、両親から授かった名前の一字「夢」をかなえた。決勝最後の3本目、最終滑走。トリプルコーク(TC)1440を含む5発のルーティンを滑りきると、遠慮気味に右手を上げた。96・00点。逆転優勝が決まっても、表情を崩さず右手に抱えたボードを掲げるだけ。新王者は、喜び方も常識を覆した。

 「ここを獲らずには終われないなと。やってきたことを全て出し切れた」

 静かなたたずまいの中に広がる喜びを表現したが、その30分前までは怒りに震えていた。1本目からTC1440に成功も、4発目の技で転倒。迎えた2本目は超大技を含むルーティンを初めて完遂しながら91・75点止まりだった。「点数は納得できなかった。イライラして怒りが止まらなかった」。その全ては3本目の滑りに昇華。冒頭のTC1440は前の2本を大きく上回る5・5メートルまで跳び上がって決め、力ずくで評価を勝ち取った。

 TC1440にこだわった理由は「誰もやっていない技」だからだ。ゆえに「ヒントも正解もない」中で、東京五輪後から「1日50本とか60本とか、かなり練習」して会得。金メダルを争ったジェームズは逆足前から背中方向に回転するエアで高得点を出したが、「前回五輪でもやっていた。そこに乗っかりたくなかった」と言い切り、未踏の領域にこだわった。3本目も同じ構成でジャッジに挑戦して逆転。「時代が変わったと思う。4年間のチャレンジを今日で全てクリアした」と満足感を示した。

 スケートボードでの東京五輪挑戦は、うまくいかないことだらけだった。1年の延期で、3度目の冬季五輪への道は険しさを増した。周りで語られる技術的な副産物については「絶対あったと思うが、再確認しづらいくらい短い期間だった」と今は分析できていない。だが、挑戦し続けた日々は、ボードを乗り換えての超大技挑戦を確実に後押しした。「精神的な部分はかなり影響した。過去の自分よりも、自分を強くしてくれる経験になった」と懐かしんだ。

 五輪3度王者ホワイトの現役最終戦で王位継承を成し遂げ、熱い抱擁を交わした。「ショーンも守る側ではなくチャレンジャーとして、今日もこの場に立った。僕にも伝わるものがあった」と、その意志も引き継いだ。次はどんな挑戦に踏み出すか。冬のパイオニアは、これからも無人の原野を行く。

 【平野 歩夢(ひらの・あゆむ)】☆生まれ 1998年(平10)11月29日生まれ、新潟県村上市出身。
 ☆サイズ 1メートル65、60キロ。中3だった14年ソチ五輪時は1メートル60、50キロだった。
 ☆家族 父・英功さん、母・富美子さん、スケートボーダーの兄・英樹(えいじゅ)さん、弟・海祝。
 ☆競技歴 4歳でスノボを開始し、英樹さんと共に父の英才教育を受ける。14歳だった13年1月のXゲームで2位、同年8月のW杯初戦で初優勝。14年ソチ銀、18年平昌でも銀。16、18年Xゲームも優勝。
 ☆二刀流 夏冬両五輪に出場した日本人は、橋本聖子らに次ぎ5人目。雪上競技(スキー、スノーボード)出身者では初。
 ☆記録ブレーカー 14年ソチは冬季五輪日本人最年少の15歳74日でメダル。冬季五輪3大会連続メダルは日本人初、24歳未満での達成は世界でも3人目となった。
 ☆三刀流やる? 父・英功さんはサーファーで、その影響で平野歩も夏場はサーフィンにも興じた。弟・海祝の名前も父の思いが詰まったもの。

 【平野歩夢二刀流の歩み】▽18年2月14日 平昌五輪で銀メダルを獲得。
 ▽同11月13日 東京五輪のスケートボード挑戦を表明。
 ▽19年5月12日 スケボー日本選手権で優勝。強化候補選手となって五輪予選大会の出場権を獲得。
 ▽21年2月25日 W杯下部ツアーのスノーボードHPで優勝。
 ▽同5月21日 スケボー五輪予選最終戦のデュー・ツアーで26位ながら五輪出場権獲得。
 ▽同8月5日 東京五輪予選14位で決勝進出を逃す。「悔いはない。スケボーで初心を学んだ」
 ▽同12月9、11日 4季ぶりにスノボW杯出場。五輪派遣基準を満たす。
 ▽同19日 冬季デュー・ツアーで「トリプルコーク1440」成功。人類初。
 ▽22年1月8日 W杯4季ぶりV。
 ▽同15日 W杯最終戦を制して初の種目別総合優勝。
 ▽19日 北京五輪代表内定。
 ▽2月9日 五輪男子HP予選を1位通過。
 ▽同11日 金メダルを獲得。

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