ききみみ 音楽ハンター

BORO 闘病しながら進化したロックな69歳が平和への願いを歌う

[ 2023年10月11日 11:00 ]

2年ぶりのアルバムを11月に発売するBORO
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 【ききみみ 音楽ハンター】ヒット曲「大阪で生まれた女」で知られるシンガー・ソングライター、BOROが24枚目の新アルバム「MILESTONE」を11月1日に発売する。69歳の作品で原点のロックを極めた。

 かつて大阪・北新地で自身を見いだした内田裕也さんは晩年、よく嘆いたという。「せめて69(ロック)歳まで生きてほしかった」。安岡力也、桑名正博、シーナ…ロック仲間が次々に早世。「やんちゃに生きて若く逝く後輩を見送る寂しさ、故人の無念さを裕也さんは感じてたはず」とBOROは代弁した。

 若い頃から病弱で下戸。C型肝炎、上顎洞(じょうがくどう)に膿(うみ)がたまり5回の手術、硬膜下血腫、腎臓がん…闘病の半生だ。歌手の命、ノドと肺を守るためタバコは20年ほど前にやめた。摂生を続け病を克服、声はデビュー当時から「高音域が2、3音広がった」と、むしろ進化している。

 裕也さんの言葉が耳に残り、69歳でロック作品を出すと決めた。「コロナが落ち着き平和が訪れるかと思いきや、ウクライナ戦争。人殺しに正義はない」と憤りの中、反戦歌を4曲書いた。「政治的な曲は日本じゃ嫌われる。でも、もうお茶を濁すのはやめようよ、と。BOROはゆるキャラじゃない」。そう、BOROはロックな69歳だ。

 ラブソングを含めた全曲を作り終えてプロデューサーにデータを送り、ほっとした2日後の5月8日。ライブ会場の楽屋で目が回った。メニエール病と診断された。「右耳の難聴とめまい、吐き気。自宅で投薬治療を続けてます」と明かした。

 収録した反戦歌「PISTOL」では「生命尊厳」と歌う。病の連続で命と向き合ってきただけに、戦場で失われる人命の重みが痛いほど分かる。平和への願いは、BOROの心からの叫びである。   (萩原 可奈)

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