ききみみ 音楽ハンター

大江千里(3) “NYの洗礼”乗り越え切り開いた音楽道

[ 2018年11月18日 10:00 ]

ニューヨークでの苦労と喜びを語った大江千里
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 ミュージシャン大江千里(58)特集の最終回は、2009年に渡った米ニューヨーク(NY)での生活から。入学した音楽大では洗礼を浴びた。オリエンテーション時にプロ歌手歴を見込まれ、即興演奏の先導役を任された。「いい格好してやろう」と臨むもリズムが外れ、失敗。その日以来、“足を引っ張るヤツ”にクラスメートは近寄らず、あいさつしても無視された。「悔しさとトホホ感…マイナスからのスタートだ」と痛感した。

 10代や20代の同級生の中、47歳の奮闘が始まった。先生を授業後に捕まえて必死に質問、ピアノも猛練習。実力も徐々にアップし、自分が心を開くと若い友達もできた。「当時の同級生はアイルランド、スペイン、フランス、アルゼンチンなど世界中で活躍し、SNSでつながってます」。

 12年、ジャズピアニストとしてデビューを果たし、NYやロスなど各地でライブ。歌手時代の曲や日本の唱歌を弾くと評判がいい。「日本人のアイデンティティーを示すと目を向けてくれる。米国でも僕の居場所はある」と肌で感じた。自身のヒット曲をピアノでカバーしたアルバム「Boys & Girls」の発売を決めたのも、この経験が大きかった。

 渡米10年、「ブルックリンに帰るとゴミが落ちてて、怒鳴り声も聞こえて嫌やなと思うけど、10分もしたら落ち着く。住めば都ですね」とすっかりホームだ。今後は「他ジャンルや映画などいろんなものとコラボし、ジャズの良さを伝えたい。ポップス畑にいた僕だから、よりキャッチーなものを作れるはず」。日米でのキャリアを生かした独自の音楽道に今後も要注目だ。(萩原 可奈)

 ★大江千里の楽曲は11月21日放送のMBSラジオ「子守康範 朝からてんコモリ!」7時台で紹介。

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