ききみみ 音楽ハンター

「クレモナ」11月公演、コロナ禍でも伝えたい〝生音〟の魅力

[ 2020年7月5日 05:30 ]

「クレモナ」の(左から)森脇ゆき、上野舞子、松田あやめ、久保田ひかり
Photo By 提供写真

 今年3~5月、コロナ禍で中止・延期になったライブや演劇は1万2705件、損失額は9048億円にのぼる。公演を再開しても感染拡大防止のため動員の大幅減を求められ、赤字必至だ。

 大阪府池田市を拠点にプロ活動する20代女性による木管四重奏団「クレモナ」は、3月にアクア文化ホール(豊中市)で予定していた定期公演を11月14日に延期した。事務所に属さず、公演収入を次回公演の制作費に充てる方法で運営。ファゴット・バンドネオン担当の久保田ひかり(26)は「自転車操業ですが観客も増え、これまで赤字は出ていません」と胸を張る。だが公演直前のキャンセルは死活問題。事前にかかった経費を回収できず次公演の資金繰りも困難になる。「11月公演が中止だと、さすがに存続の危機」と吐露した。

 アルゼンチンの作曲家アストル・ピアソラ(1992年没)を専門に演奏。タンゴとクラシックの融合音楽を異色の編成で独自に編曲する。「クラシック界に『邪道』、タンゴ界には『踊れない』と言われる」と自虐的に笑うが昨年、5時間超の野外公演に約700人を集めた人気ぶり。来年のピアソラ生誕100年を前に、楽団のさらなる飛躍を目指し国際コンクール出場を計画したが、それも中止となった。

 4人はこの苦境に嘆くどころか、必死に闘っていた。愛好者をつなぎ留め、新規ファンも獲得するためYouTubeで連日動画を上げ、1万字を超えるメールマガジンを週2回配信。「ライブの無料配信は生演奏の価値を下げかねない。音楽を体感する事にこそ価値があると、言葉や文字で伝えてきた」という。11月公演は感染対策を講じた上でより広く〝生音〟の魅力を伝えるべく、昼夜2公演をもくろむ。彼女らの奮闘に、音楽ファンが今できる事も必死に考えないと、と痛感した。(萩原 可奈)

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