ききみみ 音楽ハンター

半崎美子 下積み17年、ショッピングモールの歌姫

[ 2019年12月1日 05:30 ]

NHK大阪ホールで単独公演を開いた半崎美子
Photo By 提供写真

 シンガー・ソングライター半崎美子(38)が先月、NHK大阪ホール(大阪市中央区)で単独公演を行った。映像を駆使した壮大な演出で最新アルバム「うた弁2」の楽曲などを熱唱。大阪では初となる年に一度の集大成公演は大盛況だった。

 半崎の曲「大阪恋時雨」をカバーしヒット中の天童よしみ(65)が登場するサプライズもあった。同曲は5年前、大阪のライブ前日に作り、初披露時の観客は100人。その5年後、約1400人の前で天童と歌えたことを「奇跡」と語った。

 下積み17年の苦労人だ。2年半前、36歳でメジャーデビューをつかんだ。主戦場は全国のショッピングモールで、デビュー前は場内アナウンスも物販の準備も自力。会場の椅子並べも手伝った。だが実力は非凡。温かく澄んだ歌声、琴線にふれる楽曲は道行く人の足を留める力があった。ライブを見た多くの人が涙を流し、CDを買い、握手会で曲と重なる自身の経験を吐露する。それを聞いた半崎も号泣し、時に曲にする。各地に〝半崎信者〟が増えていった。

 ホール公演完売の動員力をつけた今も、ショッピングモールで歌い続ける。ファンと直接ふれあい、共感し、その思いを代弁する。SNSで自室からでも瞬時に、たやすく世界へ向け楽曲を発信できる時代に、不器用で〝超アナログ〟なやり方に見える。だが、目を合わせ築いてきたファンとの固いきずなは半崎最強の武器になるだろう。今回の公演でも観客が総立ちで熱い拍手を送ったアンコールの光景に、「一つ一つの積み重ねが導いてくれた公演だと証明してもらった気がしました」。終演後、彼女はそう振り返った。

 来年には全国ツアーも決まり、大阪は6月6日に同所で。地道にまいてきた種は着実に実を結んでいる。(萩原 可奈)

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