河内家菊水丸 30年ぶり東京での独演会決定 人生2度目の大作「河内十人斬り」読み通しに挑む

[ 2022年10月8日 05:30 ]

30年ぶりに都内で独演会を開くことが決まった河内家菊水丸
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 伝統河内音頭継承者の河内家菊水丸(59)が30年ぶりに都内で独演会を開く。

 10月18日、渋谷区代々木上原の音楽ホール「ムジカーザ」で河内音頭の代表作「河内十人斬り」の通し読みなどを2部制で実施。都内での独演会は1992年4月以来とあって「当時まだ20代。来年、還暦ですから隔世の感があります」と感慨深げだ。

 同作を3日に分けて歌った経験はあるが、全編の通し読みに限れば過去に一度きり。2015年12月、故郷・大阪府八尾市の河内音頭記念館で2度の休憩を挟み、計4時間20分かけて熱唱した時だ。

 当時は、声を失う可能性もあった甲状腺乳頭がんの手術から3年の節目。開演前は「途中でギブアップして“この後はCDで聞いて”となるかも」と冗談めかし、完走後は「もう1回やるのはもういいかな」と苦笑いした、町田康氏の谷崎潤一郎賞作「告白」にも描かれた大作だ。

 グリコ・森永事件やリクルート事件を題材に、自らの視点を盛り込んで菊水丸自身が復活させた河内音頭の流派「新聞(しんもん)詠み」。その起源に、河内十人斬りという1893年に大阪府内で起きたこの大量殺人事件がある。

 城戸熊太郎、谷弥五郎の義兄弟が地元有力者宅を襲撃し、幼児を含む10人を殺害した。事件後、逃亡した2人だが、官憲400人による大がかりな山狩りに遭い、自害する。捜索を指揮した警察署長のお抱え人力車夫・岩井梅吉が新聞で報道されない事件の裏話を聞き取り、盆踊りの櫓(やぐら)ですぐさま披露した。現在のワイドショーのように新聞詠みとして流行。戦後、担い手が消え、菊水丸が復活させた。

 「物語では、嫁さんを取られた気の優しい熊太郎が貸した金まで踏み倒され、返してくれと頼みに行ったら半殺しの目に遭う。そこへ気の荒い弟が帰ってきた。起こした事件は悲惨ですが、受け手の同情を誘ったようです」

 加害者の視点で描かれた同作をひっさげて、30年の空白を埋める公演をどう成功へ導くのか。プロ活動40周年の腕の見せどころでもある。

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2022年10月8日のニュース