渡辺明名人 貫録3連覇 永世名人へ“あと2”「平常心」

[ 2022年5月30日 05:00 ]

名人戦3連覇を果たした渡辺明名人(日本将棋連盟提供)
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 将棋の第80期名人戦(毎日新聞社、朝日新聞社主催)7番勝負第5局は29日、岡山県倉敷市の「倉敷市芸文館」で第2日が指し継がれ、渡辺明名人(38)=棋王含め2冠=が97手で挑戦者の斎藤慎太郎八段(29)を破り、対戦成績4勝1敗で防衛した。第76期の佐藤天彦九段(34)以来の名人戦3連覇で、5期が条件の永世名人(20世)へ折り返した。今後、来期挑戦者争いの舞台、A級順位戦に初参戦する藤井聡太王将(19)=竜王、王位、叡王、棋聖含め5冠=らへの迎撃態勢を整えていく。

 2期連続の最強挑戦者を、4勝1敗の昨年と同スコアで退けた。全8冠中、最古の歴史を誇るタイトルを3連覇した。

 「長い戦いだったのでホッとしている。いろいろあったが、目の前の一局に向かってやろうと思った」と振り返る渡辺の口ぶりに、重みが伴った。

 戦型は渡辺の先手で角換わり。この日午後、戦いが激しくなった。ノーガードの打ち合いで金銀交換、飛車まで取り合った。飛車の入手では後れを取ったが、自陣に打ち込まれた斎藤飛車の利きを遮る歩の犠打以降、攻守逆転した。

 終局後の会見では昨夏、導入した最新AIによる研究に手応えを示した。「それまでの環境が全然ダメと分かった。効率も良くなった」。序盤からリードを奪う展開が増え、2月のスポニチ主催・ALSOK杯王将戦では藤井に4連覇を阻まれて王将を失ったものの、3月の棋王戦では10連覇を達成。

 今度は3期連続の名人獲得で、5期が条件となる永世名人へ折り返した。23日に襲位した谷川浩司17世名人(60)。18世の資格保持者・森内俊之九段(51)、19世の羽生善治九段(51)までは原則引退後の襲位が決まっている。そして節目の20世名人争奪レースの先頭に、佐藤と並んで躍り出た。

 1952年、現役引退した木村義雄14世名人に贈られて以降、5期が条件になった永世名人。世襲制から実力制へ移り、まだ6人しか誕生していない。

 もう2期、されどまだ2期だろうか。6月開幕で来期挑戦権を争うA級順位戦は藤井が初参戦する。前期昇級したばかりのB級1組を10勝2敗で1期通過。10人が総当たりするA級も本命は揺るがない。

 「注目は集まると思いますけど…」と渡辺は苦笑いしつつ続けた。「A級はだいぶん煮詰まってから見るようになった。藤井さんがいるから、違う見方をするということはありません」。永世名人への意識については「それは全く考えていません」と言い切った。目前の一局に集中し続けていくことでしか、偉業は達成できないとの平常心。名人18期の大山康晴15世名人の故郷・倉敷で、その面影を見た。

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2022年5月30日のニュース