坂田藤十郎さん「偲ぶ会」に1000人参列 妻・扇千景さん、ハワイの思い出語り涙

[ 2021年10月29日 05:30 ]

涙を拭う扇千景さん(撮影・会津 智海)
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 昨年11月12日に老衰のため88歳で亡くなった、人間国宝で歌舞伎俳優の坂田藤十郎さんを「偲(しの)ぶ会」が28日、東京都港区のホテルオークラ東京で行われた。妹の中村玉緒(82)をはじめ、歌舞伎界や政界などから約1000人が参列し献花。妻で元女優の扇千景さん(88)は開場前に取材に応じ、何度も涙を拭いながら2人でハワイを訪れた思い出などを語った。

 白と紫のカーネーションや胡蝶蘭(こちょうらん)など約5000本の花で飾られた祭壇。坂田さんの遺骨は、その真ん中に置かれた。遺影は、2009年に歌舞伎界初の文化勲章を受章した際の写真。坂田さんがほほ笑みかけるその写真を背に、扇さんは初めて公の場で最愛の夫について口を開いた。一番の思い出を問われると「仕事を引退して、初めてハワイで2人で過ごしたことです」と遠くを見つめた。

 女優や参院議員として活動していた時期は多忙な日々を送っていたが、引退後は常に坂田さんに寄り添っていた。ハワイの別荘に行くのが毎年の夫婦の楽しみの一つ。地方巡業にも付き添い続け「少しはお返しできたかな」と在りし日を振り返った。

 遺骨は29日に神奈川県の鎌倉霊園に納骨予定。扇さんはこの1年、片時も遺骨から離れなかったといい「遺骨でも家にいてくれればうれしいが、覚悟を決めないと。寂しくなる」とポツリ。「あまり早く迎えに来ないでね、することがいっぱいあるから」と呼び掛け、「しばらく頑張って後片付けをしたい」と気丈に語った。

 遺骨の一部は小さな器に移して持ち続けるという。次男の中村扇雀(60)は「(2人は)ハワイが好きなので、(遺骨の坂田さんを)連れていってゆっくりしてほしい。気候も良いし、元気に思い出してくれれば」と気遣った。

 この日の会では、坂田さんの舞台写真やプライベート写真が69枚展示された。それを選んだのも扇さん。長男の中村鴈治郎(62)は「母が父にしてあげられる最後の務めなので、今日の母は興奮していると思う」と2人の絆に目を細めた。

 戒名は「妙藝院殿藤久日宏大居士(みょうげいいんでんとうきゅうにちこうだいこじ)」と発表された。

 ≪扇雀、鴈治郎「藤十郎」継ぐ≫上方歌舞伎の第一人者として知られた坂田さん。大名跡「坂田藤十郎」も、坂田さんが近松門左衛門研究に没頭する中で231年ぶりに復活させたものだった。今後について扇雀は「僕たち家族は歌舞伎をやっているので、それを継承するのが責務の一つ。誰がなるかは別にして、家で名前を守るのが宿命のような気がしている」と「坂田藤十郎」を成駒屋で受け継ぐ覚悟をのぞかせた。鴈治郎も「上方歌舞伎を大事に守っていくことが頭によぎる。大きな話ですが…」とその重みをかみしめた。鴈治郎の長男・中村壱太郎(31)、扇雀の長男・中村虎之介(23)も姿を見せた。

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