エンゼルス・大谷 ブレーキングボールの打率&長打率向上

[ 2022年9月2日 02:30 ]

ア・リーグ   エンゼルス3―2ヤンキース ( 2022年8月31日    アナハイム )

<エンゼルス・ヤンキース>6回に30号3ランを放ったエンゼルス・大谷(AP)
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 エンゼルス・大谷の30号アーチはコールの97.9マイル(約157.5キロ)の直球を捉えたもの。一方で、初回にヒックスに中堅フェンス際でジャンプして好捕された一打は、80.9マイル(約130.2キロ)のナックルカーブを叩いた。この「幻の30号」が打撃の進化を物語っていた。

 メジャー移籍当初から速球(フォーシーム、ツーシーム)には強かった大谷。1年目の18年は22本のうち18本が速球を打ったもので、球種別でも打率.302、長打率.643と高かった。半面、俗に「曲がり球」と呼ばれる「ブレーキングボール(カーブ、スライダー系)」は2本塁打で打率.253、長打率.413。19年(18発)はチェンジアップやスプリットの「オフスピードピッチ」に対して1本塁打、打率.224、長打率.289と手を焼いた。

 改善が見え始めたのが46本塁打をマークした昨季。「ブレーキングボール」を15本塁打と初めて2桁を超え、長打率も.589と、大幅にアップした。今季はここまで30本のうち12本がこの球を仕留め、全体における割合は昨季の33%から、40%に上がった。

 8月13日のツインズ戦では、平均球速100.7マイル(約162.1キロ)の右腕デュランの、過去41試合で被弾ゼロだったナックルカーブ(87.6マイル=約141.0キロ)を中越えに運ぶ滞空時間の長いアーチ。フィル・ネビン監督代行も「あんなに高く上がりながらフェンスを越えるなんて」と舌を巻いていた。

 昨季MVPの大谷に相手の警戒は強まっている。昨季20でリーグ最多だった敬遠数は、今季も現在12でリーグ最多。その中でも好結果を残す理由の一つが「ブレーキングボール」の攻略に代表される全球種への対応力だ。昨季46本中、15%にあたる7本だった決勝弾は、今季はここまで30本中6本で20%。重要な場面で打っている。

 ジャッジが51本で突出しているのを除けば本塁打上位は30本台。大谷自身も今季序盤に「去年よりは飛ばないという印象がある」と話し、ボールが飛びにくいとされる「投高打低」のシーズンで、30号到達は価値が高い。(奥田秀樹通信員)

 《際立つ広角への打ち分け》ヤンキースで04年に当時日本選手最多の31本塁打を記録した松井秀喜と比較しても、大谷の広角への打ち分けは際立っている。

 同じ左打者の2人だが、打球方向は通算175本の松井が右中間も含めた右方向が約85%で左方向は約6%。大谷は通算123本のうち右方向が約52%で、左方向へも約25%打っている。体重は102キロ前後で変わらないが、今春キャンプ中に「体の強さみたいなものは年々上がっている」と語ったように、ミートさえすれば打球を飛ばせるのが大谷の強みだ。昨年7月、大谷が日本選手新記録のシーズン32号を放った際、松井氏は「大リーグでは私も長距離打者とは呼ばれたことはありましたが、彼こそが真の長距離打者だと感じます」と称えた。

 一方、メジャー通算打率.265の大谷は、同.282の松井に関して、「少しタイプ的に僕より率も高いですし、総合的に(能力の)高いバッターの方かなと思う。目標にずっとしてきましたし、そういう選手像の中で、なおかつホームランを多く打っているというのが自分の中の理想」と話している。

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