【内田雅也の追球】野球に没頭する9月 集中力の高まりが随所に 収穫の秋が阪神にも近づいてきた

[ 2022年9月2日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神8-0広島 ( 2022年9月1日    甲子園 )

<神・広>2回無死、坂倉の打球を好捕する佐藤輝 (撮影・奥 調)
Photo By スポニチ

 プロ野球にとって9月は特別な月だ。大リーグでは9月の激しい優勝争い、またはプレーオフ進出争いを「セプテンバー・ヒート」と呼ぶ。

 「毎年この時期になると」と、大リーグで三冠王にもなった1960~70年代の強打者、カール・ヤストレムスキー(レッドソックス)が語っている。「朝、目覚めると野球のことを考えている。一日中、思いを巡らし、夜は夜で夢にまで見ている。唯一考えずにすむのはプレーしている間だけなんだ」。「この時期」とはシーズン終盤からプレーオフ、ワールドシリーズに向かう9~10月を指す。一流選手はそんな高い精神状態になる。

 阪神の選手たちも9月の声を聞いて、集中力が高まってきたようだ。

 この夜は、球際での強さが目立った。たとえば守備面である。2回表先頭、佐藤輝明は右中間へのライナー性飛球をスライディング捕球した。3回表1死、中野拓夢は遊撃後方の飛球を背中越しに捕球した。6回表無死一塁、大山悠輔は素早く鋭い動きで3―6―3併殺を完成させた。ヒーローインタビューで才木浩人が佐藤輝、中野に感謝の思いを口にしていた。

 攻撃面では狙い球を絞った打撃が光った。今季初対戦の野村祐輔は多彩な変化球を操る技巧派右腕だ。球種に絞って待てば相手に裏をかかれる。このため各打者は内、外角のコースを狙って打ちに出ていたようだ。

 5回裏、内角直球を思い切り引っ張った近本光司は右翼席に一発を放り込んだ。2死後、メル・ロハス・ジュニアは外角ツーシームに体を預けるようにして左中間に適時二塁打を放った。それまでの打席でカッターなど内角球には見向きもしなかった。外角狙いが結果として表れたのだ。

 6回表に降りだした雨は裏に強まった。中断の後、一度は再開したが、雨脚が強まってコールドゲーム。勝率5割復帰となった。6回零封の才木に完封が記録され、救援陣も休ませられた。

 試合後、土砂降りのなか、恒例のスタンドへの一礼を行った。ずぶぬれも心地よいことだろう。

 残り19試合。ラストスパートである。きょう2日からは七十二候の「禾乃登(こくものすなわちみのる)」。稲など穀物が実り始めるころだ。今季限りで退く監督・矢野燿大の集大成、収穫の秋である。 =敬称略=
 (編集委員)

続きを表示

2022年9月2日のニュース