【内田雅也の追球】「一丸」を「強み」に――自慢の救援陣で喫した阪神5000敗

[ 2019年9月11日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神4―5ヤクルト ( 2019年9月10日    甲子園 )

ヤクルトに敗れ、ファンへの挨拶に向かう矢野監督(右奥)(撮影・坂田 高浩)
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 阪神の名物オーナーだった久万俊二郎は晩年、「阪神の強み」についてよく話した。

 「私が思うには」と持論を述べた。「一つは甲子園球場。大阪と神戸の間に立派な球場がある。阪神という社名もある。大阪、神戸の地域名と同じで、企業色が薄れ、人々に親しまれる。この強みをいかさないと、ご先祖様に申し訳ない」

 「野球は素人」という久万だが、球団経営は気に掛けていた。「経営の神様」と呼ばれたピーター・ドラッカーの言葉を引用し「強みの上に築け」と訓示したものだ。

 9日はそんな久万の命日だった。2011年、90歳で没し、もう8年が過ぎた。

 では、阪神の今の「強み」は何か。他球団に自慢できるのは救援投手陣だ。救援防御率は12球団唯一の2点台を誇る。シーズン終盤は豊富、多彩な救援陣を前面に押し立て戦うべきだと当欄で書いたこともある。

 10日夜の甲子園はまさにそんな試合だった。昼間の猛暑が夜になってもおさまらない。逆に夕方になると、浜風がなぎ、そよとも風は吹かない。試合後半になっても気温30度を超えていた。異常な蒸し暑さだった。

 しかも阪神・秋山拓巳とヤクルト・高橋奎二の両先発がともに3回で早々降板となった。救援、継投勝負は阪神の望むところではなかったか。

 確かに救援陣は好投した。島本浩也、岩崎優、ピアース・ジョンソン、藤川球児と4回から9回まで無失点。延長10回、ラファエル・ドリスが失点して敗れた。ただ、敗戦の責任はやはり決定打を欠いた打線だろう。

「強み」の救援陣で敗れ、さあ、どうするか。ドラッカーにはこんな言葉もある。「日本人の強みは、組織の構成員として、一種の“家族意識”を有することにある」

 たとえば「あなたは何をしているか?」と問うと、欧米人は「会計士」などと答えるが、日本人は「トヨタ自動車に勤めている」などと答える。「プロ野球選手」でなく「タイガースの選手」と言える意識である。

 さて、この敗戦は1936(昭和11)年の初年度から通算5000敗目だった。35年の球団創設から85年目。負けても負けても応援してくれる人々がいたからこその、誇らしい節目だ。久万の言う「親しみ」があったからである。

 ならば、これを強みにしたい。ファンも一体となった家族意識の「一丸」である。=敬称略=(編集委員)

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