【ソフトバンク・小久保監督単独インタビュー】一球にかけろ!! 開幕投手の有原に「前後裁断」託した

[ 2024年3月29日 05:00 ]

開幕を控え色紙に「前後裁断」と記したソフトバンク・小久保監督(撮影・岡田 丈靖)
Photo By スポニチ

 プロ野球は29日、セ、パ両リーグ計6試合が行われて開幕する。ソフトバンクは敵地・京セラドームでオリックスと対戦。小久保裕紀監督(52)が、1軍初采配を前に本紙の単独インタビューに応じた。先発の有原航平投手(31)には開幕投手を通達した手紙に筆字で「前後裁断」と記した。自身も現役時代に帽子のつばに記した言葉。4年ぶりのリーグ制覇を果たすため、過去でも未来でもなく、今この瞬間に集中して白星をつかみにいく。(聞き手・井上 満夫)

 ――初陣に向かう率直な気持ちは。
 「期待半分、不安半分、もう背中合わせですね。現役の時もそうやったけど。現役と仕事は違うけど、心境はどっちにも傾いていない。背中合わせです」

 ――言葉で表すと。
 「ワクワク、ドキドキ、緊張感、不安…。全部が入り交じっている。でも、始まってしまったら腹のくくりができる。なるようにしかならん。だからと言って眠れないとかはないけど、どんなスタートになるかなとかは考えますよね。始まったら勝負に徹する。勝つために最高の決断を下していく。始まる前はああでもない、こうでもないと考えますよね」

 ――監督として17年WBC、22年の2軍監督とそれぞれに初陣があった。そして、今年は1軍で開幕戦。
 「2軍では(開幕投手を)田上奏大に託しましたが、絶対勝とうと思ってはなかった。でも、WBCの初戦は思い出したくもないんで。あんなふうにはならんやろとは思ってます」

 ――1次リーグのキューバ戦で「正直、こんなにプレッシャーがかかるとは…。僕が一番、地に足が着いていなかった」と振り返っていた。
 「体の異変がね…。でも、こればかりは未知の世界なんで。その日、その時間にならないと分からないです。でも、さすがにないと思うけど始まる前、同じ症状が出たりして(笑い)。それが楽しみでもあるし。でも何が来ても大丈夫は大丈夫。始まってしまえばね」

 ――1軍メンバーも決まった。
 「スタメンで出られる数は決まってる。あとは控え選手に対するフォローや役割が大事ですね。中村晃にしても今年の最初は代打でやってもらう中で彼自身に対するフォローや、よりいい環境、いい場面で使おうという思いでプランを組む。そこのケアは大事。チーム編成という点では」

 ――有原に開幕投手を託した手紙に“前後裁断”と記した。いつ知った言葉なのか。
 「いつやったかな、巨人行った時ぐらいにメンタルトレーナーの先生に“一瞬に生きる”より、もっと試合に入る中で、もっと突き詰めた言葉として教えてもらって。そこから帽子のつばに書くようにした。確か下柳(剛)さんも書いてた」

 ――意味としては。
 「前の打席での良かった球が残ってしまったり“期待に応えなあかん”とか。本来そこしかない場面なのに前後のことをいっぱい考えてしまう。それを断ち切らないとという思いから一番、分かりやすい言葉だったんです」

 ――その思いを有原へ託した。
 「その一球に、という意味でね。その積み重ねがチームのため、自分のため、ファンのためにしっかり腕を振ってくれとの話です」

 ――投手陣を支える打線は超強力だ。
 「スタメンに山川、ウォーカーの右の長距離砲が入ったのは実際に大きい。柳田、近藤を並べないといけなかった中で、そこの間に山川が入ることで(左右)ジグザグになる」

 ――それでも「野球は投手」だと言う。
 「そんなにいい投手からは点は取れないんです。このメンバーで戦えるが最終的にリーグを制するのはピッチャー。いかにオスナまでつなぐか。本当にそこの逆算からの試合運び。9回が決まらないと決められない。そこでのオスナは大きい」

 ――狙うは4年ぶりの優勝。美しい野球を就任時に掲げ、スローガン「VIVA!」の下、美しき最終形とは。
 「そこは、答えはない。ただベンチ全体が醸し出す、一つの球に集中する雰囲気だとか、自分の長所を出し、チームの勝利のために泥くさく最後まで球を追う姿、進塁打を打ちにいく姿。そういうのは全て美しい。個々が少しでも持ちながら。強制的にこうしなさいというのは設けていませんよ(笑い)」

 ◇小久保 裕紀(こくぼ・ひろき)1971年(昭46)10月8日生まれ、和歌山県出身の52歳。星林から青学大を経て93年ドラフト2位(逆指名)でダイエー(現ソフトバンク)入団。95年に本塁打王、97年に打点王獲得。03年オフに巨人にトレード移籍し、07年にソフトバンクにFA移籍。12年限りで現役引退した。通算2057試合で打率.273、413本塁打、1304打点。13~17年に侍ジャパン監督を務め、21年にソフトバンクの1軍ヘッドコーチ、22、23年に2軍監督を務めた。右投げ右打ち。

 ○…この日、小久保監督はオンライン形式で行われたパ・リーグ6球団の監督による共同会見に出席。同席した中嶋監督が率いる3連覇中のオリックスとの戦いを前に「この3年間、優勝していたのがオリックスさんなので。今のホークスの力がどれくらいかというのを試せるというか、チャレンジできる相手」と話した。

続きを表示

「始球式」特集記事

「落合博満」特集記事

2024年3月29日のニュース