【内田雅也の追球】制した「清算」の1球 阪神の高い得点力、その一端が見えた開幕戦

[ 2023年4月1日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神6―3DeNA ( 2023年3月31日    京セラD )

<神・D>8回、右二塁打を放った佐藤輝は激走(撮影・岸 良祐)
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 3ボール―2ストライクは投手、打者ともにイン・ザ・ホールの剣が峰だ。最後の1球には野球のだいご味が詰まっている。大リーグではカウントを0―0に「清算する」という意味で「ペイオフ」と呼んでいる。

 阪神はこのフルカウントをことごとく制して開幕戦をものにした。勝負強いと言えるが、薄氷を踏む思いだった。

 3点リードの9回表に登板した湯浅京己は対した打者6人中5人をフルカウントにした。3四球で満塁としたが決定打は許さなかった。最後もペイオフ・ピッチで凡飛に取って無失点で終えた。

 「こんなもんでしょ。開幕はね」と監督・岡田彰布も重圧や緊張を思いやった。結果としての0点を素直に喜んだ。

 攻撃面ではフルカウントからの一打が効いた。

 4回裏は1死一塁から小幡竜平がフルカウントから3球連続で走者スタートのランエンドヒット。ファウル、ファウルの後、転がした一打が二塁カバーに動いた遊撃手の左を抜ける中前打になった。1死一、三塁としたおかげで、続く投手・青柳晃洋でセーフティースクイズの作戦をとることができた。

 5回裏も無死一塁でシェルドン・ノイジーがフルカウントからランエンドヒットで中前打して一、三塁をつくった。続く大山悠輔の中犠飛につなげた。振り返れば2回裏の3点目、近本光司の左犠飛もフルカウントからの一打だった。

 終わってみれば9安打で6点。5回まで6安打で5点と効率のいい攻撃だった。昨季4試合対戦し3勝を献上、防御率1・11と苦手にしていた左腕・石田健大に食い下がる姿勢が見えていた。1回裏、中野拓夢が8球、先に書いた4回裏の小幡は実に12球粘っていた。

 機動力や敵失につけ込む、そつのない攻撃だった。8回裏、右中間安打で二塁を奪った佐藤輝明の走塁に糸原健斗が低め難球を引っ張った進塁打も渋く光っている。

 阪神はオープン戦で12球団最多の72得点(1試合平均4・2点)をあげていた。チーム打率・234は7位と平凡だったが、得点力は高かった。

 岡田はオープン戦を終えた時「ウチがトップよ」と自ら切り出し「と言うことは得点力はあるということよ」。その一端が見えた開幕戦だった。

 「まあ、143分の1だけど結果として貯金1。そういうことよ」長いシーズンの精算を見通していた。=敬称略=(編集委員)

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2023年4月1日のニュース