山梨学院 県勢春夏通じて初の決勝進出 吉田監督男泣き「今日はむちゃくちゃうれしい」

[ 2023年4月1日 04:30 ]

第95回選抜高校野球大会準決勝   山梨学院6-1広陵 ( 2023年3月31日    甲子園 )

<広陵・山梨学院>準決勝を突破し、感極まる山梨学院・吉田監督(中央)(撮影・須田 麻祐子)
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 準決勝2試合が行われた。山梨学院は広陵(広島)を6―1で下し、山梨勢では春夏通じて初の決勝進出。高校通算本塁打44本を誇る「4番・一塁」の高橋海翔内野手(3年)が、決勝打を含む3安打で勝利に貢献した。報徳学園(兵庫)は史上初となる2度目の春連覇を目指した大阪桐蔭に、7―5で逆転勝ち。02年以来21年ぶり3度目の選抜優勝へあと1勝とした。

 目いっぱい、左手を伸ばした。低めに沈む136キロのスライダー。最後は左手一本で中前に運んだ。1―1の9回1死二塁。4番・高橋は中前適時打に、一塁上で下からグルグルと回した右手を、一塁ベンチに何度も突き出した。山梨勢初の決勝へ導く一打。笑みがこぼれた。

 「決勝タイムリーが自分でうれしい。食らいつくだけだった。最高でした」

 4番の一打から、さらに5安打で計5点。8回まで緊迫した投手戦に、最後に打線が報いた。清峰(長崎)監督時代の09年選抜で優勝した吉田洸二監督も「全国優勝した時も泣くことはなかったけど、今日はむちゃくちゃうれしい」と、涙でナインを称えた。

 つなぐ4番に徹した。1年夏から4番を担い高校通算44本塁打の高橋。だが、今大会の1、2回戦は3番だった。「実力がついて、ホームラン狙いになっているところが見えた」と指揮官。無安打に終わった2回戦後に話し合い、打撃修正を期待した。3回戦から4番に復帰し、この日の3安打を含め3戦連続安打&打点をマーク。3試合で計12打数7安打4打点、打率・583とまさに4番の働きも「つなぐことだけを考えている」と殊勝だった。

 父の助言も活躍につなげた。2回戦後、社会人のクラブチームREVENGE99でもプレーした父・孝平さん(43)が「悪い時ほどセンター返し」とアドバイス。6歳から一緒に素振りをするなど、打撃を磨いてきた父の一言で「積極的に振れるようになった」と感謝した。

 開幕戦から5度目の校歌を銀傘に響かせ、富士山をイメージした淡いブルーに染まるアルプスへ、あいさつに向かった。「次も自分たちの野球ができれば勝てる」と高橋。名峰・富士と同じ日本一が、目の前に迫った。(村井 樹)

 ◇高橋 海翔(たかはし・ひろと)2005年(平17)6月7日生まれ、東京都出身の17歳。6歳から地元の軟式チームリトルフィッシュで野球を始めた。足立一中時代は世田谷西リトルシニアに所属し2年時にジャイアンツカップで優勝。山梨学院では、甲子園は今回で3季連続出場。高校44本塁打。50メートル走6秒7、遠投105メートル。右投げ右打ち。

 《親子鷹対決制す》山梨学院の吉田健人部長(26)は、吉田監督の長男。広陵もベンチ入りした中井惇一副部長(28)が中井監督の長男と、「親子指導者」対決でもあった。吉田監督は甲子園通算20勝目で「高校野球の監督は甲子園で20勝して一人前と言われていた。そこには来られたんですかね」と話した。決勝の相手・報徳学園は、清峰(長崎)を率いて選抜優勝した09年準決勝で対戦。大角健二監督は当時、報徳学園のコーチで吉田監督は「そういう意味では縁がありますね」と話した。

 ≪8度目挑戦 ついに壁破る≫山梨学院が、山梨県勢として春夏通じて初の決勝進出。同県勢は春4度(甲府商1、市川1、東海大甲府2)夏3度(東海大甲府3)と計7度、準決勝進出もいずれも敗退。8度目の挑戦で初めて壁を破った。これで、甲子園決勝未経験の県は山形、富山、島根の3県となった。また、開幕戦勝利から決勝進出は16年の智弁学園以来7年ぶり、5勝しての決勝進出は選抜史上初だ。

 ≪広島県勢に初勝利≫山梨県勢は甲子園で広島県勢と過去3度対戦。いずれも相手は広陵で、91年春に市川、02年夏に日本航空、03年夏に東海大甲府が敗れたが、4度目で初勝利となった。

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