草刈正雄 「探偵ロマンス」で奇抜アクション NHK演出「往年にご一緒できた感覚」

[ 2023年1月21日 05:00 ]

ドラマ「探偵ロマンス」で白井三郎(草刈正雄)が小皿を投げる場面(C)NHK
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 【牧 元一の孤人焦点】俳優の草刈正雄(70)が、21日にスタートするNHKのドラマ「探偵ロマンス」(土曜後10・00、全4話)で、異色のアクションを見せる。

 「探偵ロマンス」は新進気鋭の脚本家・坪田文さんが書き下ろすエンターテインメント活劇。作家デビュー100年の江戸川乱歩の知られざる誕生秘話で、のちに乱歩となる平井太郎(濱田岳)が初老の名探偵・白井三郎(草刈正雄)と出会い、世間を騒がす難事件に巻き込まれる。

 第1話の後半で三郎は犯人を追跡するが、演じる草刈が見せるアクションは、竹ざおを使って飛んで蹴ったり小皿を手裏剣のように投げつけるなど奇抜だ。

 演出の安達もじり氏は「どこまでやっていいのかというドキドキ感を持ってやった。アクションシーンの展開は坪田さんが脚本に書いてくれていたものだが、現場でアクション監修の横山誠さんや私たちもアイデアを出し、坪田さんとやりとりして取捨選択した。『ハードアクション』というより、どちらかと言うと『楽しめるアクション』をやりたいという考えがみんなの中にあった」と明かす。

 草刈はかつてドラマや映画で華麗なアクションを見せた。しかし、現在は70歳。いかに経験豊富とはいえ、体力的な限界があるはずだ。

 安達氏は「どこまでお願いして良いのか探り探りやった。ご本人はとことんやるという乗りで、いざ撮り始めると、驚くほど切れが良く、走ればとても足が速くて、凄いと思った。若い頃にたくさんアクションをやっていた方で、最初は『忘れちゃったよ』とおっしゃっていたが、ちょっとした構えでも、さまになっていた。ご本人もどんどん楽しそうに演じてくれて、往年の草刈さんとご一緒できた感覚になるほどのアクションシーンになった」と話す。

 アクションシーンの撮影はCGを使用しないアナログ方式。草刈をはじめ、濱田岳や松本若菜、尾上菊之助をワイヤーで宙につり上げた場面が含まれている。

 制作統括の櫻井賢氏は「草刈さんは菊之助さんがワイヤーでつられるのを見て『菊之助さんにあんなことをして大丈夫なのか?』とおっしゃっていた(笑)。今どき珍しいアナログの撮影現場で、人力によってワンカットワンカット積み重ねた。疲れた筋肉をもみほぐすためのトレーナーさんにも現場に入ってもらっていた」と話す。

 草刈が演じる三郎は数々の難事件を解決してきた名探偵。3年前に引退を表明して姿を消していたが、推理小説家にあこがれる太郎と出会い、因縁深い「怪盗」との対決に向かうことになる。

 櫻井は「企画段階で、このドラマをバディーものにしようと思った。当初の考えでは、太郎の相手は中年探偵だったが、坪田さんから『中年ではなく、じいさんがいい。じじい探偵にしたい』という話が出た。ギラギラした40代、50代では、世の中に不満を持って腐っている太郎と仲良くなれない。太郎のバディーには人間的な深みが必要だ。『ギラギラしていないが、とても強い』というファンタジーを体現してくれる人は誰かと考え、草刈さんにお願いした」と説明する。

 第1話で、犯人に対する三郎の大立ち回りを目の当たりにした太郎は、思わず「なんてじじいだ」と感嘆の声をもらす。

 櫻井氏は「あのセリフに尽きる。卑屈になっている太郎の心の扉を開く要素として効くアクションになっていると思う。草刈さんはちょっと笑えるアクションのエンターテインメント性をよく理解してくれて、チャーミングに演じてくれた」とたたえる。

 草刈らのアクションシーンはほぼ全話に渡っており、どうやら最終話に壮大なクライマックスが待ち受けているらしい。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局総合コンテンツ部専門委員。テレビやラジオ、映画、音楽などを担当。

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2023年1月21日のニュース