藤井5冠兄弟子がプロ昇格 杉本八段門下2人目・斎藤裕也三段 苦節10年の遅咲き25歳

[ 2022年9月11日 05:30 ]

昇格を決めた斎藤裕也(右)と藤本渚の新四段
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 将棋の第71期奨励会最終日が10日、東京都渋谷区の将棋会館で行われ、藤本渚(17)斎藤裕也(25)両三段がともに13勝5敗で10月1日付での四段昇段(プロ入り)を決めた。斎藤は杉本昌隆八段(53)門下で、藤井聡太王将(20)=竜王、王位、叡王、棋聖含む5冠=とは兄弟子の関係。17歳1カ月の藤本は現役最年少棋士となる。

 斎藤はヒヤヒヤの通過で杉本門下としては藤井に続く2人目の棋士となった。12勝4敗と首位タイの成績で臨んだ最終2局だが初戦を失った。リーグ1期目とあって序列は39と不利な立場。「自分なりに頑張って来期につなげればいい」と気を取り直して迎えた2局目を勝ち、ライバルの脱落もあって2位を確保した瞬間は「信じられない気持ちでした」と放心状態だったという。

 苦労人だ。15歳だった12年6月にプロ養成機関の奨励会入り。その3カ月後に入ってきたのが後の史上最年少5冠・藤井だった。「入会した時から自分より全然強い。強すぎて目標にするような存在ではなかったです」。あっという間に奨励会を駆け抜けていった5歳下の天才とは対照的に出世は停滞気味だった。二段昇段後、初段に落ちた経験もある。「その時は相手は小学生とか中学生とか。自分は大学を出た頃で彼らからするとオッサンの年代。あの時が一番恥ずかしく、つらかった」と振り返る。

 規定では原則として26歳までに四段昇段を果たさなければ自動的に退会となる。ただ、リーグで勝ち越しを続ければ29歳までプロ入りのチャンスをうかがうことはできるが、25歳の斎藤にとって残り時間は刻々と迫っていた。それでも地道な努力は報われた。「同年代が多く、気が楽だった」という三段リーグは、なんと藤井以来の1期抜け。「彼は彼。自分は自分で自分なりに頑張ろうと」。遅れてきたルーキーはそう言って目をしばたたかせた。

 師匠の杉本八段は女流タイトル戦の仕事で鹿児島県滞在中。斎藤は昇段決定直後にメールを送り「返事はまだです」と苦笑していたが、喜びの会見が終了してスマホを確認すると「おめでとう。今忙しいので、また後で」のメッセージが入っていた。斎藤は目尻を下げて喜びをかみしめた。

 ◇斎藤 裕也(さいとう・ゆうや)1997年(平9)5月29日生まれ、三重県桑名市出身の25歳。将棋は両親から教わり、鈴木大介九段の著作に影響され振り飛車党となる。立命大政策科学部卒。身長1メートル80、体重は「それが話題になるのはちょっと…」と非公表。趣味は動画サイトでポケモンの対戦実況を見ること。

 《藤本が現役最年少棋士に》トップ通過の藤本は大阪市の高校2年生。出身は高松市だが、奨励会に集中するため大阪に転居して研さんに努めた。四段昇段については「まだ実感が湧きません。自力昇段の可能性がなかったので、気負わず指せたのがよかった」と初々しい胸中を明かし、現役最年少棋士の肩書には「特に意識していません。プロとして胸を張れる実力はないので」と謙虚だった。

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2022年9月11日のニュース