「鎌倉殿の13人」義円役・成河 ハリウッド級特殊メークに感嘆!三谷脚本“初体験”常に“隣人”描く凄み

[ 2022年3月20日 06:00 ]

「鎌倉殿の13人」義円役・成河インタビュー(上)

大河ドラマ「鎌倉殿の13人」第10話。兄・源頼朝の元に駆けつけた義円(成河)(C)NHK
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 舞台を中心に活躍中の実力派俳優・成河(そんは、40)がNHK「鎌倉殿の13人」(日曜後8・00)で大河ドラマ初出演。中盤へ向かう物語のキーパーソン、源頼朝(大泉洋)の異母弟・義円(ぎえん)役に挑んだ。脚本・三谷幸喜氏(60)の作品も初参加。撮影の舞台裏や三谷脚本の魅力を聞いた。

 <※以下、ネタバレ有>

 俳優の小栗旬が主演を務める大河ドラマ61作目。タイトルの「鎌倉殿」とは、鎌倉幕府将軍のこと。主人公は鎌倉幕府2代執権・北条義時。鎌倉幕府初代将軍・源頼朝にすべてを学び、武士の世を盤石にした男。野心とは無縁だった若者は、いかにして武士の頂点に上り詰めたのか。新都・鎌倉を舞台に、頼朝の13人の家臣団が激しいパワーゲームを繰り広げる。三谷氏は2004年「新選組!」、16年「真田丸」に続く6年ぶり3作目の大河脚本。小栗は8作目にして大河初主演に挑む。

 成河は大学時代に演劇を始め、北区つかこうへい劇団10期生。11年には第18回(10年度)読売演劇大賞・優秀男優賞(「BLUE/ORANGE」および「春琴」の演技により)を受賞。昨年21年も「イリュージョニスト」「子午線の祀り」「スリル・ミー」「森 フォレ」「検察側の証人」「ローマ帝国の三島由紀夫(リーディング公演)」と舞台に立ち続けた。

 今回演じる義円は、頼朝の異母弟で義経(菅田将暉)の同母兄。父・義朝が敗れた「平治の乱」(1160年)後に近江・園城寺へ入るが、兄の挙兵を聞き、京から駆け付ける。弓矢の名手にして、和歌にも通じる。

 前回第10回(3月13日)で初登場。ラスト、八重(新垣結衣)に対する北条義時(小栗)の想いを知った頼朝が2人を取り結ぶと話していると、突如、若い僧が現れる。義円だった。

 常陸の佐竹義政(平田広明)征伐の際に和田義盛(横田栄司)が捕まえた小鳥が入る鳥籠を手に取り「これはツグミでございますね。ヒヨドリに似ていますが、ツグミはさえずりません。口をつぐむ、からツグミと呼ばれているようです。兄上でございますね。お会いしとうございました。源義朝が八男、乙若でございます。今は義円と名乗っております」と頼朝にあいさつ。いかにも聡明に見える男は、物語に何をもたらすのか。

 大河初出演に、成河は「舞台は2~3年前には決まっていたりして、映像の仕事とオファーのタイミングが全然違うんです。ずっと舞台漬けの日々なので、映像のお話を頂いても、スケジュールが合わないことも多々ありました。だから『また無理なんでしょ?』と思いましたね(笑)。今回は、うまく縫えるようにマネジャーさんも頑張って調整してくれて、撮影に参加することが叶って、うれしかったです。毎回の仕事、一つ一つが縁。今回の縁は、自分への何かのメッセージだったのかなと思っています」と喜んだ。

 義円は荒くれ者の坂東武者たちとは異なり、和歌もたしなむ。「気品は少し言い過ぎかもしれませんが、そんな佇まいを意識しました。僧侶なので、精神も清らかな感じ。そういう人物として兄弟の中に入っていく、ある種の異物感が面白い。そこを大事にしました」と役作り。

 剃髪の特殊メークは、付けるのに1時間以上、外すのに30分かかり「その大変さはありましたが、ハリウッドと遜色ない最先端の技術が使われていて、物凄く近くで写真を撮っても、シワ1つなく、毛穴までが表現されている精工さ。衣装や小道具も含めて、そこまで精工なものを身に着けさせていただくと、精神に及ぼす影響があって。簡単に言うと、とてもその気になれるんですね(笑)。舞台は比較的、何もない、必要最小限のところから自分の想像力を逞しくして向き合っていくことが多いですが、今回のように、キャラクターの世界観を身にまとわせていただくと、自分のイメージがより広く、深く補強されました。これは本当に初めての体験でした。(特殊メークを)一度着けると、精神が清らかになります(笑)。剃髪姿になってみて、これが飾りを削ぎ落とし、むき出しにした自分を見つめるということなんだ、これが僧侶というものなんだという気になりました」と貴重な経験を振り返った。

 三谷作品も初参加。三谷氏主宰の劇団「東京サンシャインボーイズ」(1983~94年、現在は充電期間中)もビデオで見るなど「ただただファンだったので、うれしかったです。演劇って、ややもすれば自分とは遠い世界の出来事に見えることもあるじゃないですか。翻訳物だったり。そういう中で、三谷さんは何が凄いかと言えば、いつも『隣の人』を描いていると思うんです。演じる側も、見る側も『登場人物のこの感覚って、分かるよね』と。例えば、一見自分とかけ離れた政治の世界でも、三谷さんの作品になると、グッと身近に感じられますよね。どんな題材でも、そのダイナミズムは意地でも手放さない。そして、それは決して簡単なことじゃないですから、本当にリスペクトしています」

 「今回も800年以上前の話。格式も時代劇の美しさの一つだと思いますが、三谷さんは800年以上前だろうが、何だろうが『それって隣の人と一緒だよね』『現代の人と同じ嫉妬だよね』という描き方。本当に凄いと思いますし、今回、そこに呼んでいただけたことは何より光栄です。実際に演じてみると、取り繕う必要が何もない、しゃべりやすい台詞なんです。もちろん所作の先生に教わった時代劇のベースを実践した上で、三谷さんが書かれた台詞をどういうふうに口にしていくか。日本語というのはとても難しくて、どういうしゃべり方をするかが、身体の動きに結び付いてしまいます。三谷さんの言葉は本当に会話がしやすくて、演者の感性も開かれていくと思いました。演じていて、とても楽しかったです」と三谷作品の魅力を身をもって実感した。

 =インタビュー(中)に続く=

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2022年3月20日のニュース