エッセー「魔性ですか?」高岡早紀(下) お岩から27年 「しなやかな女でありたい」

[ 2021年5月24日 08:50 ]

高岡早紀の初エッセー「魔性ですか?」
Photo By 提供写真

 【牧 元一の孤人焦点】女優・高岡早紀(48)の初エッセー「魔性ですか?」の中で、ヒロイン・お岩を演じた映画「忠臣蔵外伝 四谷怪談」(1994年公開)に関する文章が女優論として面白い。

 撮影当初、高岡は19歳。女優としてまだ駆け出しで、時代劇も初めて、春を売る女という役柄も初めて。いくら演じても先に進めない状況に陥った。その時、深作欣二監督に掛けられた言葉が「おまえさんは女なんだからわかるだろう?」。当初はよく理解できなかったが、やがて、それが女優の神髄を表していることに気づくという内容だ。

 リモートでインタビューに応じた高岡はこう振り返った。

 「私が思うように演じていいのだと思いました。私が女である以上、全部が正解。間違いはない。よく『その根拠のない自信はどこから来るんだ?』と言うじゃないですか。でも、私は女という根拠を持っている。周りの意見やアドバイスで考え方を変えることもあるけれど、自信を持つことはできます。私は深作監督のあの言葉で、ここまで女優を続けることができました」

 映画「忠臣蔵外伝 四谷怪談」は日本アカデミー賞で作品賞や監督賞、最優秀主演男優賞(佐藤浩市)などを受賞。高岡も新人俳優賞だけではなく、最優秀主演女優賞を史上最年少(当時22歳)で受賞した。

 「あの日、そうそうたる女優さんたちの間に並ばせていただいて、いま思い出しても寒気がします。そんな年齢の私が賞をいただいて、自分自身がこの先どうなるのか、周りからどう思われるのか、すごく怖かった。だけど、もちろん、うれしかった。撮影で本当に大変な思いをして、クランクアップしたら女優を辞めようと思っていたほどでしたから。あんなに大変なことはあれ以降ありません。それで賞をいただけたので、自信につながりました」

 27年も前に公開された映画はいま見ても鮮烈だ。高岡が演じたお岩はいちずな愛に生きる女性で、肉感的でありながら極めて純粋。毒を盛られて顔が変形する終盤では、現在の高岡が演じるサイコスリラーの主人公・リカのような壮絶さも見せる。

 「お岩、映画『モンスター』で演じた和子、リカと、モンスターという共通項がありますね。私という人間も、そこに入るのかしら…」

 現在はテレビ朝日系のドラマ「桜の塔」(木曜後9・00)に銀座のクラブのママ役で出演中。今後はNHK連続テレビ小説「おかえりモネ」(月~金曜、前8・00)にテレビ局の社会部気象班デスク役で登場する。6月18日には主演映画「リカ~自称28歳の純愛モンスター~」も公開される。

 「私は『しなやか』という言葉がとても好きです。いろんな意味で、しなやかな女でありたい。しなやかな女優でありたい」

 見る側としては、今後も、しなやかな魔性の輝きを楽しみたい。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局デジタル編集部専門委員。芸能取材歴30年以上。現在は主にテレビやラジオを担当。

続きを表示

2021年5月24日のニュース