渡辺王将の「美」、永瀬王座の「実」 解説・糸谷八段が漢字一文字で表現 王将戦第2局第1日

[ 2021年1月24日 05:30 ]

スポニチ主催 第70期王将戦7番勝負第2局第1日 ( 2021年1月23日    大阪府高槻市・山水館 )

初手を指す永瀬王座(左は渡辺王将)(撮影・奥 調)
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 渡辺明王将(36)=名人、棋王との3冠=に永瀬拓矢王座(28)が初挑戦する第2局が23日、開幕した。渡辺の先勝で迎え、先手は永瀬。戦型は永瀬のエース戦法・相掛かりへ進み、57手目を永瀬が封じて指し掛けとなった。第2日は24日午前9時に再開する。

 永瀬のエース戦法・相掛かりになった。両者の対戦は渡辺の5連勝中。先手が永瀬へ移り、永瀬が最後に勝った2018年3月、棋王戦5番勝負第4局と同じ戦型へ。10手目、△9四歩と前回端歩をあいさつし合った渡辺だが、△5二王として3年前から離れた。

 40手目△7六歩(第1図)が永瀬によれば1日目昼食休憩前にして「中盤の出口、終盤の入り口」という局面。解説の糸谷哲郎八段(32)は本譜の▲7四歩以下も激しい展開としつつ、▲3四飛△同飛▲同角の飛車交換もあったと指摘。△7七歩成から△8九飛が進行の一例で、午後は速度計算をにらんだ駆け引きが続き、57手目を永瀬が封じた。

 展開の早さについて「お互い研究してきた形なのかなと思います」と渡辺。永瀬は「難しい局面。じっくり考えたい」と2日目の攻防をにらみ、7回目のタイトル戦で初の封じ手も無難にこなした。

 「美」の渡辺と「実」の永瀬。糸谷は両者を対比して漢字一文字でそう表現した。

 「渡辺王将は昔ながらの美しい将棋。センスがあって美しく斬っていく」。代名詞は、少ない手駒で相手王を寄せ切ってしまう細い攻め。無駄を極限までそぎ落とすことで相手の盲点を突き、成立しないと思われた攻めまで実現してしまう。

 永瀬は堅実な手を重ねる。千日手や持将棋を辞さない粘りに象徴的。第1局の終局間際にも見て取れた。

 自王の受けなしから銀捨て、金捨てと連続王手で迫った。最後の金捨ては応手3択のうち1つを選ぶと渡辺王は頓死だった。最善を尽くす永瀬将棋に揺るぎはなく、第2局封じ手前はまだ相掛かりを突き詰めてきたその研究範囲との見立て。2日目に秘めたカードが明かされる。(筒崎 嘉一)

 《封じ手は?》
 ▼立会人久保利明九段 ▲6一桂成。8一の飛車を取って桂が王から遠ざかると攻めが届かなくなる。
 ▼副立会人糸谷哲郎八段 ▲6一桂成。寄せ合いに入っていく。永瀬王座の激しい攻めが始まると思う。
 ▼記録係古森悠太五段 ▲6一桂成。スピード勝負の局面だから。

 《高槻ご当地棋士・古森五段、3年連続記録係》記録係を務めたのは高槻で7番勝負が始まった一昨年から3年連続となる古森悠太五段(25)。同市出身のご当地棋士で、駆けつけた市の関係者や宿泊先の従業員らも「性格もいい“高槻のプリンス”。ぜひ頑張ってほしい」とエールを送っていた。そのことを伝え聞くと、少し照れながら「昨年は(昇段で)1つ階段を上がることができたので、さらに上を目指して応援を励みに頑張りたいです」と語った。

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