大河「麒麟がくる」 いまだ信長に仕えない光秀の胸中と帰蝶の行方

[ 2020年10月12日 11:50 ]

11日放送のNHK大河ドラマ「麒麟がくる」で織田信長(染谷将太)と話す明智光秀(長谷川博己)(C)NHK
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 【牧 元一の孤人焦点】史実として、明智光秀は織田信長の家臣となる。そして、謀反を起こし、本能寺で信長を葬る。それが光秀の物語の軸だ。ところが、NHK大河ドラマ「麒麟がくる」では当初予定放送回(全44回)の半分以上が過ぎた現在も光秀は信長に仕えていない。

 11日放送の第27回で、こんな場面があった。光秀(長谷川博己)の助言通り上洛(じょうらく)を決めた信長(染谷将太)は光秀にこう問う。「そなたは、義昭さま(滝藤賢一)のそばに仕えるのか、それとも、わしの家臣となるか。いま、それを決めよ」。光秀はしばらく間を置いた上で「私の心は決まっております」と答える。いよいよ、信長に仕える時が訪れたかと思いきや、出てきた言葉は「将軍のおそばにまいります」だった。

 制作統括の落合将チーフ・プロデューサーは「光秀が武士としての自分のアイドル・足利義輝(向井理)と涙の別れをしたのが第23回。第25回では『わしに仕えぬか』と問うた信長に『義輝さまに仕えたかった』と語っている。光秀の中に武家の棟梁(とうりょう)としての『将軍』という存在は唯一無二の存在であり、義輝が義昭に代わってもそれは変わらない」と光秀の将軍至上主義を説明。今後の展開に関して「力のある大名が将軍を支えてこそ安定した国ができる、という思想は光秀の中で揺るぎのないものだが、それが義昭を失ってからどうなっていくのかが後半の大きな見どころになる」と明かした。

 史実では、やがて義昭と信長は敵対。信長は義昭を追放し、室町幕府は滅亡する。この過程で光秀が信長に仕える場面が描かれることになるのだろう。

 それにしても、将軍を最上位に置く光秀に対する信長の心中はどうなのか。あの場面で信長は光秀の答えを聞いて、こう告げた。「残念だが、分かった。以後、そのように扱う」。この場面が、のちの信長と光秀の冷たい関係の起点になり、それが結果的に本能寺の変につながってゆくのではないか…。そんな印象を受けた。

 落合氏は「冷たい関係の起点ではない。あくまで信長にとって光秀は将軍との間を調整してくれるコーディネーターであり、大切に扱わなければならない兄のような存在。あの質問をすることで信長は光秀の心中をあらためて推し量った」と話した。

 11日の放送で、もうひとつ気になったのは信長の正室・帰蝶(川口春奈)の動向だ。かつては信長のプロデューサー的役割を果たしていて存在感が強かったが、コロナ禍からの本放送再開(8月30日)の後、一度も姿を見せていない。

 落合氏は「帰蝶は史実でも信長の上洛間際は信長と距離感があったといわれている」と指摘。その上で「光秀と信長を結んだ最大の存在として、今後も二人の関係性が揺れる重要な局面で姿を現す」と予告した。

 11日は日本テレビ系で始まった連続ドラマ「極主夫道」で川口春奈の元気な姿を見たが、大河再登場も楽しみにしよう。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局デジタル編集部専門委員。芸能取材歴約30年。現在は主にテレビやラジオを担当。

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