巨人・戸郷ノーノー「最高です」 沢村栄治以来88年ぶりの甲子園「伝統の一戦」で

[ 2024年5月25日 05:30 ]

セ・リーグ   巨人1-0阪神 ( 2024年5月24日    甲子園 )

<神・巨>ノーヒットノーランを達成しガッツポーズする戸郷 (撮影・奥 調)
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 88年ぶりの聖地での快挙だ!巨人の戸郷翔征投手(24)が24日、阪神戦で史上89人目(101度目)の無安打無得点試合を達成。打者29人に123球を投じ、5奪三振、1四球だった。チームでは18年7月27日の中日戦での山口俊以来6年ぶりも、伝統の一戦では37年5月1日、敵地の甲子園ではその前年の36年9月25日で、ともに沢村栄治以来。球界の盟主が迎えた90周年の記念イヤーで、6年目右腕が歴史に名を刻んだ。

 異様な雰囲気が、むしろ戸郷の集中力を高めた。1―0の9回2死二塁。最後の123球目に選択したのは得意球だ。「一番の持ち味であるフォークでいく」。中野から空振り三振を奪って自身初の無安打無得点試合を達成した。どよめきと歓声。クールに投げ込んできた右腕が、ガッツポーズと同時に甲子園の夜空に雄叫びを上げた。

 「やっと緊張から解き放たれた。最高です。みんなの空気が回を追うごとに静まりかえって誰も来てくれなかった。杉内さんも7回から僕のところに来なくなったので、より一層、緊張しました」

 序盤から飛ばし、今季最速の152キロを9回に記録するなど球威は衰えなかった。3回2死で自身の失策で初めて走者を許すも続く近本はスライダーで右飛。9回は先頭の木浪に四球を与えるなど1死二塁とされたが、後続を抑えた。甲子園での阪神戦でのノーヒットノーランは36年の沢村栄治以来、88年ぶり2人目。その試合のスコアも1―0だった。90周年を迎えたチーム創成期の伝説の投手に肩を並べ「甲子園でできたのは凄い縁を感じる。偉大な先輩方に多少肩を並べることはできたかな」と笑った。

 世界の舞台が成長させてくれた。この日に26年の第6回WBCの開催地が正式決定。決勝の舞台は昨春と同じ米マイアミのローンデポ・パークに決まった。右腕も世界一を奪還した昨春大会の決勝で2番手で登板して2回無失点に抑えたマウンド。「前回のWBCが僕を強くしてくれたし、そういう経験が今日(の大記録)に生きてきた。また出たい」とエース格として期待される次回大会に思いをはせる。WBCで共闘し、ともに日本時代に無安打無得点を達成したドジャース・山本、カブス・今永らの投球を日頃からチェック。カットボールやツーシームの投げ方を教わったパドレス・ダルビッシュには今もサプリメントについて相談する。チームの連敗を4で止めた戸郷について、阿部監督も「素晴らしい。それしかない。もう泣きそうになっちゃったよ」と称賛した。

 「今日だけは余韻に浸りながら夜を迎えたい。まだまだやらなあかんなという気持ちでいっぱい」と戸郷。宮崎でマグロ漁師になろうとしていた少年は常に向上心を持って巨人のエースとなり、昨季のリーグ王者を歴史的な快投でねじ伏せた。(青森 正宣)


 ≪プロ野球初の快挙と同じ1-0≫巨人の投手が、甲子園球場で阪神を相手にノーヒットノーラン。伝説の大投手・沢村栄治が成し遂げたのが1936年(昭11)9月25日だった。その日から実に3万2018日。時空を超えて戸郷が快挙を達成した。

 沢村は当時19歳の若き右腕。スコアはこの日と同じ1―0で、打者31人に4四死球で7三振を奪った。タイガースの選手から無安打無得点だけは恥ずかしいからと何度も訴えられ、捕手が球種を教えたがそれでも抑えた、との逸話も残る。これが長いプロ野球の歴史で初のノーヒットノーランでもあった。

 翌37年5月1日にも沢村はタイガース戦で無安打無得点。舞台は、現在の東京都江東区にあった洲崎球場だった。さらに40年7月6日の名古屋(現中日)戦でも、3度目の偉業を成し遂げた。太く短い野球人生。沢村が太平洋戦争で戦死したのは、その4年後だった。

 ▽戸郷の23年の第5回WBC 初選出され、1次ラウンド初戦の中国戦、米国との決勝の2試合に登板。決勝は先発・今永の後を受け、3回から2番手で登板してトラウト、ターナーを空振り三振に斬るなど2イニングを無安打無失点に抑えた。いずれも救援だったが、計5イニングで被安打2で1失点、防御率1.80、9奪三振で3大会ぶりの世界一に大きく貢献した。

 ◇戸郷 翔征(とごう・しょうせい)2000年(平12)4月4日生まれ、宮崎県出身の24歳。聖心ウルスラ学園では2年夏に甲子園出場。18年ドラフト6位で巨人入団。1年目の19年9月27日DeNA戦でプロ初勝利。22年にプロ初の2桁となる12勝を挙げ、154奪三振で自身初のタイトルとなる最多奪三振を獲得した。昨季は2年連続2桁勝利を挙げ、今季は自身初の開幕投手を務めた。23年WBC日本代表。1メートル87、84キロ。右投げ右打ち。

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