創志学園「長沢監督と長い夏を」と結束 4年ぶり3度目の甲子園 西純に憧れるエース岡村が完封

[ 2022年7月25日 15:07 ]

第104回全国高校野球選手権岡山大会・決勝   創志学園2―0倉敷商 ( 2022年7月25日    倉敷マスカット )

甲子園出場を決め、歓喜する創志学園の選手たち
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 5安打完封で甲子園出場を決めた創志学園のエース・岡村洸太郎(3年)は歓喜の輪がとけ、ベンチに戻ると、ウイニングボールを長沢宏行監督(69)に差し出した。

 「いや、これは持っておけ」と突き返され「大事に取っておきます」と苦笑した。「長沢監督とはまだまだ一緒にできる。僕を育ててくれた監督さんなので、うれしく思っています」

 今夏限りでの退任が決まっている長沢監督と一緒に甲子園へ――を合言葉に挑んだ夏だった。岡村は1年の冬、長沢監督から上手投げから横手投げへのフォーム修正を助言してくれた。「横に変えてから球威も増した。自分の恩師です」。当時120キロ台だった球速がいまでは145キロを計測する。

 年末年始はトレーニングキャンプで高知県室戸や淡路島を訪れ、砂浜などを走り込んだ。「5日間・200キロ」と走った修了証カードを携えて大会に臨んでいた。

 この日も9回裏2死、優勝まであと1人の場面で伝令が出て、カードを見せられた。「あのカードは“これだけやったんだから”という自信になる」。最後の打者は得意の内角速球で見逃し三振に切った。

 山口市出身の岡村だが、小学生のころ、西純矢(現阪神)らが甲子園で活躍する姿を見て、創志学園への進学を決めた。
 西純はオフに母校グラウンドを訪れ、自主トレをしていた。遠くから眺めていた岡村は「オーラが出ていました。それに体が大きく見えた。あこがれの存在です」。自身の進路は「今は考えていない。夏が終わってから」と言うが、プロも狙える逸材だろう。

 「選手たちに感謝の気持ちしかありません」と長沢監督は話した。「自分のこともあって複雑な思いで夏の大会を迎えた。でも主役は選手たちですから」

 5月24日、今夏限りでの退任が発表となった。後任は元東海大相模監督で春夏5度の全国優勝に導いた門馬敬治氏(52)が就く。2010年の野球部創部から強化してきた長沢監督としては総決算の夏だった。

 創志学園で「史上最弱」と呼ばれた世代だそうだ。「1年生大会も負けてね。本当に弱いチームだったんですよ。それが、ここまで成長した。感慨深いですよ」

 この日の決勝の相手、倉敷商には昨年夏、準決勝で敗れていた。延長11回、3―4のサヨナラ負けだった。敗戦直後、選手たちが泣くじゃくるなか、1本の電話がかかってきた。相手は日体大の先輩にあたる元智弁和歌山監督の高嶋仁氏(76)だった。「夏はどこも必死になってくるんだぞ。もっとやれ!」。その日はグラウンドに帰り、新チームのメンバーで夜9時まで練習した。

 昨夏の敗戦をボールボーイとして、目に焼き付けていた岡村は「1球の甘い球で負けることもある」と野球の厳しさを学んでいた。今夏は5試合をほぼ1人で投げ抜き、長沢監督との約束を果たしたのだった。 (内田 雅也)
 

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2022年7月25日のニュース