【プロ野球・球宴名場面(5)】若トラの咆哮 史上初の1試合3打席連発「掛布のオールスター」

[ 2022年7月25日 17:20 ]

1978年7月25日、球宴で史上初の3打席連発を放ちMVPに輝いた掛布
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 2リーグ分立翌年の1951年にセ・リーグとパ・リーグの対抗方式で産声を上げ、今年で72回目を数えるプロ野球「マイナビオールスターゲーム2022」が7月26日(福岡PayPayドーム)27日(松山・坊ちゃんスタジアム)に開催される。昭和から平成、令和…巨星たちが数多の名勝負を繰り広げてきた真夏の球宴。野球ファンの記憶に刻まれた名場面ベスト10(スポニチ選定)を紹介する。(所属、球団名、登録名、球場名は当時)

 ■1978年第3戦=7月25日

 掛布雅之(阪神)は緊張の中にいた。前日までは6番に入っていたが、この日は「3番」。「4番」は世界の王貞治(巨人)、「5番」はミスター・タイガース田淵幸一である。夢のようなメンバーとクリーンアップを組む名誉と重圧。初回は四球。チームの先輩である山本和行から「今日はお前の賞品運びにきたんだ」と言われ気持ちがほぐれた。

 4回の第2打席。相手は佐伯和司(日本ハム)。2年前まで広島に在籍し、74年にはプロ初本塁打を放っている投手から右翼へ弾丸ライナーの1発を放り込んだ。

 第3打席は5回、前年のパ新人王・佐藤義則(阪急)から右翼へ特大の2打席連続アーチ。「1本目の佐伯さんとは昔から相性がよかった。2本目は会心の当たりでした」

 8回の第4打席。公式戦では“伝統の一戦”の敵地である後楽園球場が「カケフ・コール」に包まれた。阪急の剛腕・山口高志のカーブを右翼ポールに当てる3打席連続弾。1試合3発は3日前の第1戦(広島)でエイドリアン・ギャレットが記録しているが3打席連続は球宴初の快挙だった。

 「自分でも信じられない。怖いぐらいですよ」

 22日の第1戦で優秀選手賞、23日の第2戦で敢闘賞。第3戦は当然のMVP。3試合10打数7安打18塁打、5長打の大暴れで78年はまさに「掛布のオールスター」。この年のオフ、田淵が西武へ移籍。翌年、掛布は初の本塁打王を獲得した。名実ともに新ミスタータイガースに名乗りをあげた夏の宴となった。

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