「見事なチャレンジ」山梨学院、リスク覚悟の内野5人 重大局面だったからこそ意義がある

[ 2022年3月22日 05:30 ]

第94回選抜高校野球大会第3日第1試合・1回戦   山梨学院1-2木更津総合 ( 2022年3月21日    甲子園 )

<木更津総合・山梨学院>13回無死一、二塁、外野手をひとり内野に入れたシフトを敷く山梨学院(撮影・北條 貴史)
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 【秋村誠人の聖地誠論】リスクは承知で勝負する場面だった。タイブレークに入った延長13回。表の攻撃で無得点に終わった山梨学院はその裏、内野を5人で守る異例のシフトを敷いた。甲子園で過去にも何度かあるが、この局面での挑戦に大きな意義を感じた。

 タイブレークは無死一、二塁から。ここで中堅手・岩田悠聖が投手と一塁手の間に入り、外野手2人を左方向へ寄せた。タイブレーク用に準備してきた勝負手だ。送りバントなら、一塁側からプレッシャーをかけて三塁側へさせて三塁封殺か、強打でも中堅から左方向への打球で打ち取る。投手の榎谷礼央も内角へ投じ、木更津総合は強打へ切り替えて打球は左飛に。シフトの狙いは成功していた。

 ただ、タッチアップした二塁走者の好走塁で一、三塁とされ、最後はサヨナラ押し出し四球。「作戦が選手に無理させてしまったかもしれない」。吉田洸二監督はそう振り返ったが、リスク覚悟のシフトで勝負したことに価値がある。

 「安全は、最善の策ではない」とは、国民栄誉賞を受賞した囲碁棋士・井山裕太の勝負哲学。安全の積み重ねは隙を生み、リスク覚悟の積極的な手こそが局面を切り開くということだろう。無死一、二塁を無失点に抑えるには、オーソドックスな守備隊形では難しい。結果はサヨナラ負けでも、シフト失敗だとは思わない。

 73年夏の甲子園。怪物・江川卓の作新学院(栃木)と対戦した柳川商(福岡)は、内野5人シフトで2度のサヨナラのピンチをしのいだ。最後は延長15回の末に敗れるが、怪物を苦しめた。今春からユニホームを一新した山梨学院。基調のスクールカラー「C2Cブルー」には「Challenge to Change」(変化を楽しむチャレンジ精神)の意味がある。異例のシフトは、見事なチャレンジだった。(専門委員)

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